繊維産業、娯楽産業における女性労働者の権利を求める動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

職場における女性労働者の権利保障と差別の撤廃を求めるデモが3月1日の国際女性デーに行われた。デモの中心となったのは繊維産業、娯楽産業に従事する女性労働者らであった。

繊維・テキスタイル産業におけるジェンダー不平等

ナコン・ルアン・テキスタイル社労組の副代表及び女性労働統合グループの代表であるウィライワン女史は、1.女性労働者が健康で安全に働くことのできる職場環境の創出 2.解雇された労働者も社会保障基金を脱退しなくてもすむよう社会保障法を改正すること 3.社会保障法と労働者保護法を改正し、非典型雇用やインフォーマルセクターに従事する労働者も保護の対象とすること、などを盛り込んだ請願書を政府に提出した。

その他にも、HIV感染労働者の医療補助や、企業の政策決定への女性参加の促進、解雇者を対象とした保障基金の設立などを提案している。

タイ・縫製・テキスタイル・皮革産業労働連合の代表は、同産業の女性への差別は、退職年齢に表れていると述べている。同代表によると、繊維・縫製産業では、男性職員の退職年齢が55歳である一方で、女性職員は45-50歳となっている。繊維産業に従事する女性労働者が、男性と同じ55歳の退職を求めて裁判を起こし、勝訴したというケースもある。

公共交通事業団労組のワラパ議長によると、公共交通機関も同様の女性差別が存在していたが、労組と経営者との協議を重ねた結果、退職年齢を引き上げることに成功したという。

1997年のアジア通貨危機後、最も深刻な影響を受け、労働者が大量に解雇された縫製・テキスタイル産業では、職種上、手先が器用で目のいい労働者が好まれる傾向があり、その結果、若年女性労働者が大量に採用されている。そのため、求人募集広告には年齢制限が設けられ、時には容姿までも採用条件に入れられることがあり、これは明らかに違法であるとの専門家は指摘している。

娯楽産業における女性労働者への権利を求める動き

3月上旬、バンコクやチェンマイなど各都市の女性労働者代表50名が、娯楽産業に従事する女性労働者の権利を求めてバンコクに結集し、新娯楽法を審議する上院特別委員会代表に、請願書を提出した。1966年に制定された娯楽産業に関する諸事項を定めた法律は、現在改正審議中である。

請願書は、従来社会保障法の対象外であった娯楽産業(歌手、ホステス、マッサージガール)の女性従業員も、社会保障の対象に加えるよう求めている。

工場労働をしている女性従業員と同じように、同産業に従事する女性労働者にも、健康保険や産休・育休制度を利用したいという声が高い。また、賃金の未払いや不当搾取といった人権に関わる問題も、娯楽産業では日常茶飯事となっており、同産業の女性労働者への人権保護を活動目的としたNGOも、タイでは多数存在している。

しかし、上院委員代表は、「今回の法改正においては同産業の労働者の保護は盛り込まない予定で、娯楽施設での麻薬の使用と未成年者の取締りを強化するための変更に留まる見込み」と述べている。

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