解消しない技能不足

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

イギリスが今なお技能不足(skills gap)問題に直面していることが、学習・技能協議会(LSC)の調査でわかった。新たな科学技術の導入、企業組織の変化、職業訓練・人的資源開発の不足、製品・サービス内容の変化などが背景にある。

調査報告書は、『2002年イングランドの技能』と題され、イングランドの全部門を対象に行われた。それによると技能不足を訴えている使用者の割合は、2001年が7%であったのに対し、2002年には23%に上昇した。とくに「同僚や上司に職務上の計画等を適切に伝達できない」「部下に明確に指示を出せない」など、従業員の「コミュニケーション能力」の不足を感じる使用者の割合が高く、61%にも達している。また顧客・取引先への対応能力、基礎的な情報技術・問題解決能力、組織全体を把握する能力などでも、不満を表明している使用者は少なくない。

とくに技能不足を感じている部門は、卸し・小売り・ホスピタリティー(ホテル、レストラン業など)部門、製造業、金融・事業サービス部門で、それぞれ29%、20%、17%の使用者が不足を訴えている。

技能不足の対策として、高等教育への参加を促すことがよく指摘されるが、多くの使用者は懐疑的だ。中間管理職従事者の多くは大卒で、確かに読み書き能力には長けているが、企画能力、人的管理能力、発案・構想能力、商品化能力などの点で、使用者は不十分と見ている。

こうした技能不足の影響が生じる場面についてもっとも多く指摘されたのは、顧客サービスの低下で57%、ついで品質低下が54%、事業・受注件数の減少が30%、製品・サービス開発の遅延が28%、などとなっている。

結果についてLSCは、技能不足はイングランドの長期的な競争力を脅かすとしたうえで、むしろ使用者側の問題を指摘している。多くの使用者が、現在の企業業績を改善するための技能だけでなく、高付加価値市場への参入を果たすのに必要な技能を把握しておらず、また新規雇用者ばかりに期待して既存の従業員に対して適切な訓練機会を与えていない、と論評している。

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