非農業部門雇用者数、30万8000人の大幅減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

2003年2月の失業率は前月より0.1ポイント上昇し、5.8%となった。非農業部門の雇用者数は前月から30万8000人(季節調整済み)減少した。これは同時多発テロ直後の2001年10月、11月以来、最も大幅な減少である。多くのエコノミストは、求職意欲を失う労働者が増えると低下する可能性がある失業率よりも、非農業部門雇用者数の方が労働市場の状況を的確に表しているとして同統計に注目している。

雇用減は、ほとんど全ての主要産業に及んでいる。製造業における雇用減は5万3000人に達した。過去3年間に非農業部門雇用者数は0.2%減少したが、製造業では雇用者数が同期間に11.3%も減少している。悪天候により建設業では4万8000人雇用減少した。

サービス関連部門全体では20万4000人の雇用減が生じた。中でも小売業で9万2000人の大幅な雇用減となった。雇用が増加したのは、政府部門(1万3000人)の他は、ヘルスケア産業、住宅ローン取扱金融機関などに限定されている。

2月の雇用減の一部は、対イラク戦争が間近に迫っていることによる消費低迷、企業の先行き不安を反映している。しかし、この他にも様々な理由から人員削減が行われている。例えば、天然ガス価格上昇によるコスト増から肥料製造会社が従業員を解雇したり、資産価格低迷による寄付金の減少で美術館が人員削減を進めている。また、将来の景気見通しを立てにくいため、長期雇用をためらい、従業員を増やすよりも、超過勤務時間の増加を選択する企業が増えている。医療費の高騰により、高い医療保険料負担を嫌う使用者が、人数よりも労働時間の調整で業務量の増加に対応することも、この傾向に拍車をかけている。

ただし、雇用統計が現実よりも状況を悪く見せている可能性も指摘されている。多くの地域が悪天候であったこと、さらに、対イラク戦争で最近約15万人の陸軍予備兵が招集されたためである。労働省によれば、民間部門で雇用されていた予備兵が調査期間中に全く働いていない場合でも、他の労働者に置き換えられていなければ、解雇者として扱われないことになっている。しかし、使用者の中には、こうした予備兵を誤って解雇者とみなしている可能性がある。

今回の雇用統計で憂慮すべきこととして、27週以上求職活動をしている長期失業者の比率が22.1%(約190万人)に達し、1年前の約15%から大幅に上昇し、1992年以来、最も高い比率となったことがある。平均失業期間は、2003年2月に18.6週間となった。これは1994年以来最長で、失業期間の長期化は今も進行している。

労働市場の軟化は、中高年ホワイトカラーの職探しを困難にしている。雇用における年齢差別を禁止する法があるものの、中高年の医療保険料は高いことや、訓練費用を回収できる前に退職する可能性が高いため、使用者は、中高年労働者の採用に消極的である。採用面接をしなければ年齢差別訴訟を起こされる心配がないので、中高年労働者との採用面接を避ける企業が多い。株価の低迷で企業年金401kの運用に失敗し、早期引退することもままならない中高年の元中間管理職が、大幅な賃金低下を受け入れることができず求職活動を続ける事例が報道されている。

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