2002年の組織率13.2%に低下

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

労働省の発表によると、2002年の労働組合員数は1610万人(2001年は1639万人)、組織率は前年比0.2ポイント低下し13.2%となった。中でも雇用減が続いている製造業で組合員数は約8%も減少し、248万4000人になった。サービス関連部門の中で比較的組織率が高い産業である運送業、ホテル業、旅行業などが2001年の同時多発テロの影響を受け、組合員数を減少させている。

民間部門の組織率は前年比0.4ポイント低下し8.5%になった。これに対し、公的部門の組織率は0.3ポイント上昇し37.5%になった。

2002年の組織率は、組織率統計を取り始めた1983年(組織率20.1%)以来、最も低い。ただし、今回発表された統計は2000年国勢調査による人口推計に基づいており、2002年分と同じ手法で再計算された2001年統計と比較可能であるが、それ以前の統計と直接比較可能ではない。

組織率が低下しているばかりでなく、労働組合は様々な形で劣勢を強いられている。多くの企業が業績不振に陥っている航空業界や鉄鋼業界は、ワークルールの変更を含む労働条件の大幅な引き下げを実施、あるいは検討している。

ハーバード大学のローレンス・カッツ教授は、組織率の低下が進む中、労組の活動が成果をあげるためには学生、宗教団体などの他のグループと協力することが必要と指摘している。

全米教師連盟(AFT)は、20年ほど前から準組合員制度を持っている。準会員は、団体交渉には参加しないが、会合、ロビイスト活動を労組とともにし、労組が提供している保険に加入する権利を持っている。準会員を含むAFT組合員数は、2002年に5万4000人増加し、128万人に達している。他の労組も、最近、この制度に注目し、類似の制度導入を検討している。

ミシガン州立大学のデビッド・ニューマーク教授は、労組が力を失いつつあるため、労組の政治活動の内容にも変化が生じつつあると分析している。労組は、従来、法定最低賃金の引き上げを求めてきたが、最近は、高い組織率を保っている公共部門を梃子にした活動に重点を移し、市町村職員や市町村が発注した仕事を請け負う労働者の賃金を引き上げ、普通の生活を維持するために必要な生活賃金(living wage)以上にするための生活賃金条例制定を市町村に働きかけている。学生、宗教団体が労組と協力して生活賃金を要求している例も多く、今後、労組が活動の幅を広げる上で、生活賃金制定を求める運動は重要な役割を果たす可能性がある。生活賃金運動は、1990年代に始まり、この2、3年、活発になっている。これまでに条例が定められたのは、ニューヨーク、ミネアパリス、ボストン、シカゴ、デンバー、デトロイトなどの100以上の市や郡である。この他、現在、125の市町村が条例制定を検討している。

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