昇給に際しての従業員の交渉力

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

タイでは、毎年1月に前年のパフォーマンスを参考にして昇給の割合を決めている企業が殆どである。が、昇給の際に経営者と従業員の間でトラブルが発生することも多い。2003年の昇給に関する概況をまとめた。

2003年における各企業の昇給の特徴

  1. 多くの従業員が交渉力不足のため従業員は毎年の昇給が例え2~4%と少なくともそれを認めざるを得ないのである。
  2. 政府が消費者物価指数の計測方法を変え、インフレ率が0.%となったこと。
  3. 経営者は、重役クラスや特別な知識・技能を持つ従業員に対する昇給は認めるケースが多い。
  4. 労使関係は改善している。経営者側は、以前よりも従業員との話し合いの場を設けてきており、労組も成熟してきた。また従業員も、昨今の経済及び企業の経営状態を理解し、解雇の不安も手伝って、低率または0%の昇給に慣れている。

一般的には2003年の昇給も、前年度と同程度とみられているが、電気産業に関しては、2002年よりも落ち込むのではないかとみられている。一方、自動車組立工場や、バイク部品メーカーなどは昇給額の増加が期待されている。

今日の労働市場における従業員の交渉力

タイの労働市場は2002年10月から逼迫している。政府は、「問題は解決しており、投資や雇用の拡大、特に自動車産業での雇用拡大が期待される」と発表しているが、これはうわべの数字だけを述べているに過ぎない。例外的に、自動車関連産業へは、日本やアメリカ、EUの企業が投資額を増加させているため、雇用が拡大する可能性があるが、その雇用も非典型雇用の増加であることが多い。

失業率が下がったように見える要因として以下のような点が挙げられる。

  1. 政府の失業者の定義では、雇用を探す意思を失った人は失業者とみなされないため、長引く不況で求職意欲を失った大量の労働者が統計から抜け落ちている。
  2. 非典型雇用(短期雇用、パートタイム雇用)が増加している。
  3. 卒業後就職できなかった若年者が、進学する割合が高まっている。新卒者は失業するよりも、大学や大学院、専門学校などに入学する傾向がある。また、解雇された人々も再び大学で学び始めるケースも多い。そのため、大学や各種高等教育機関は、週末や夜間のみ開設するコースが設けたり、タイ語と外国語の授業の選択を可能とするなど柔軟性のあるコースを開設し、大きな利益を上げている。
  4. 労働運動は非常に弱体化している。労組内での内部紛争や訴訟が頻発している。多くの労組は明確な目的を持っておらず、経営者や政治家からの経済支援に依存して活動を行っている。
  5. 労働市場におけるいわゆる3K部門(建設業、家政婦、レストラン、港湾、漁業、農業)で、合法・非合法外国人労働者が増加している。

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