ブルーカラー労組が利用者の視点からITシステム認証事業を開始

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

スウェーデンの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年4月

ユーザーズ・アウォーズ(Users Awards)とは、労働生活の中で、より良く、より利用しやすいIT(情報技術)システムを促進するために、ブルーカラー労働組合連盟であるスウェーデン労働組合総同盟(LO)が設立した新会社である。ITシステム構築者と、製造業、医療、行政部門の利用者の間に立って審査認証機関としての役割を担うために、すでに2400万クローネが同社に投資された。またスウェーデン王立科学技術研究所、KTH(スウェーデンで最も有名な工科大学)、そしてウプサラ、カールスタード両大学の科学技術学科と協力してITシステムを利用者の立場から格付けする方式を開発した。

IT部門の企業にとって、利用者との意思疎通を行うだけでは十分でない。LOのユーザーズ・アウォーズ責任者たちは、ITシステムに投資する企業に対し、購入に当たっての援助やサポートが必要であると指摘している。現在こうした企業は、供給側のなすがままで極めて無力な状態であり、良心的な供給業者に対しても、ITシステムを扱った経験が乏しいために、細かい仕様要件を提示する知識を十分に持っていない。

現在LOの発案で、毎年IT利用企業に働きかけ、満足しているITシステムを指名推薦してもらうというコンテストを催している。これまで3つのIT企業がユーザーズ・アウォーズ(利用者が授与する賞)を受賞している。

この賞のためにKTHの研究者たちは面接調査と並行して行われる質問票を作成した。まず30問ほどの質問が行われる。さらにIT機器の生産者と企業経営者にも面接調査が行われる。しかし1カ所の職場の利用者がそのシステムに満足しているだけでは十分ではない。認証が行われるまでに、同じシステムを3社で利用、調査する。政府の科学技術研究基金であるスウェーデン・イノベーション・システム開発庁(Vinnova)は35億クローネ規模のIT・通信部門研究開発プログラムの一環として、LOの表彰制度の費用の一部を負担している。

このユーザーズ・アウォーズ・プログラムは、ホワイトカラー労働者連盟である職員労働組合連合(TCO)が数年前に着手して成功させたコンピューター画面の認証制度にヒントを得ている。これまでTCOの認証制度は職業、健康の面から安全な画面を認証・奨励しており、TCOはこれを金銭的にも成功させている。

購入者側の能力不足が原因で、公共機関や公共サービスが、一流の国際IT企業にだまされてITシステムに投資し、後になってそれが高価すぎ利用者に親切でないと分かるということが数多くある。廃棄しなければならなくなったシステムに何百万クローネもの資金が費やされてきたのである。これまで、利用者は自分たちの需要、経験、知識に適合したITシステムにではなく、いらいらさせられるシステムに適応しなければならないことがあまりに多かった。ユーザーズ・アウォーズ社は、すでに多くの顧客を持ち、採算の合う事業になると見込まれている。

2002年11月25日、第1号の企業が認証された。人事配置計画作成システムを届けるタイムケア社である。このシステムはすでに3カ所の職場で試みられた。そのうちの2カ所オーレアンスデパートとファールン病院においてKTHの研究者が評価した結果、受賞に値すると評価された。

コールセンターで働くブルーカラー労働者には必ずしもあてはまらないことだが、ホワイトカラー労働者に比べ、製造現場のブルーカラー労働者は、ITシステム導入により、仕事がより楽しくなり、満足感が高まる場合が多い。多くのブルーカラー労働者が、使いやすいITシステムを用いて、仕事を通した充足感を高めたいと希望しており、これが、LOがITシステム認証事業を開始した理由である。また、スウェーデンの労組が、賃金決定だけではなく、生産方式の選択に関する共同決定により深い関心を示しているものと捉えることもできる。

2003年4月 スウェーデンの記事一覧

関連情報