病気欠勤削減のための政府案発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

2003年1月21日、労働大臣は病気による長期欠勤に関する政労使三者委員会の勧告にもとづく一連の提案を発表した。現在この案は各政党が検討中である。同相は春の会期中に法案を国会に提出したいとしている。

政労使三者委員会は、2003年1月に開始され、「全ての人に労働生活を(Ett arbetsliv for alla)」と題する一連の提案を発表した5日前の2002年12月1日に、スウェーデン企業連盟の代表者がいらだって議論の席から退いた。民間使用者側が三者委員会を去った大きな理由は、病気報告による長期欠勤(1996年以来倍増してきた)の原因が職場環境にあるとの強い批判を受け入れ、労働者の病気欠勤費用を使用者側が一層重く負担すべきであると認めることを拒否したためである。その後、三者委員会は、労組と公共部門使用者が支持した勧告をまとめた。病気欠勤期間中にパートタイムの仕事に就くことを原則とすることなどを提言した勧告内容の一部は、今回、発表された政府案に反映されている。

政府案の主要内容は次のようになっている。

  • 病気になった労働者を診察する医師はパートタイム病気欠勤を第1の選択肢として考慮すべきである。現在は、割が全日の病気欠勤(全く仕事をせずに欠勤)、3割が部分的な病気欠勤(1日の通常労働時間の25%、50%、5%の時間をパート労働者として労働)している。
  • 欠勤1年間が経過した後は、職業安定所と協力して他の就業機会を探すべきである。
  • 待機日を避けるために就業日程を変えることを今後は出来ないようにするべきである。(現在の制度では、例えば終業1時間前まで働いた時点で病気であると報告し、待機日による1日分の給与減額を避けることができる。)
  • 60歳未満の者は3年以上疾病給付金を受給できないようにすべきである。
  • いわゆる使用者期間(使用者が直接負担する病気欠勤の最初の2週間)を延長し、2週間後は、使用者に引き続き疾病給付の15~50%の支払いを義務づける。その新たな費用を賄うため、健康保険に使用者が拠出する給与税を0.5ポイント下げて2.5%に削減する。これは労働環境の改善と、リハビリの早期開始を使用者に促そうとする考えからである。疾病給付金の使用者負担の拡大は、病気欠勤が最も多い公共部門にまず導入し、その後労働市場全体にも行き渡らせるべきである。
  • 職業安定所は、長期病気休暇中の人たちや、復職できず病気と報告している失業者たちに仕事を探すよう指示されている。障害者を雇用する使用者に対し、政府が障害者の賃金助成を行っているが、この制度を適用する可能性があると同相は示唆していると思われる。

こうした改革案は積極的労働市場政策(職業訓練、職業教育など)を補足し、従業員がまだ持っている残存労働能力に焦点を当てるべきとしている。病気による部分的な休暇は、病気の症状が、痛み、背中に感じる不快や精神医学的な病気などの場合に原則として適用すべきである。病気欠勤が必要と証明する場合、医師は医学的理由を説明する義務を負うべきである。使用者は部分的な病気欠勤中の従業員にパートタイムの仕事を見つける義務があり、その従業員の全日の病気欠勤を回避できない場合はその理由を示さなければならない。

健康保険の行政機関は、病気と報告中の労働者、使用者、職業保健サービス機関と常に連絡を保つべきであり、職業安定所とは定期的に会合をもつべきである。また病気休暇開始後8週間以内に、保険医療を専門とする医師に当該ケースを検討してもらうべきである。労働相は、こうした改革案は、1990年代に機能低下が進んだ職業保健サービスの改革を手始めとした総合政策の一部であると述べている。

使用者たちは病気欠勤への使用者負担を拡大するこれらの案をこれまで拒否しており、疾病給付金の減額を提案している。しかし一方で、現在の仕事に不満で別の仕事を試みたいと思う労働者が、これまでの先任権を失わずに休職できるという寛大な休暇制度案については使用者側は了承している。

疾病給付への使用者による拠出期間を延長する案は財務省の発案で、2%の財政黒字をもたらすための一手段と見られる。同案が国会に提出される法案に今のままの形で残る可能性は低い。ブルーカラー労組を始め各労組は、使用者負担が増せば病歴のある労働者の新たな職探しや、政府の助成を受けていない仕事を失業者が見つけることが現在よりさらに困難になるだろうと懸念している。

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