労働社会保障部、2002年の事業結果を総括

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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労働社会保障部は、2002年12月25日、各省の労働と社会保障局(庁)の担当者を、広東省南海市に召集し、全国労働社会保障事業会議を開催した。同会議で張左己・労働社会保障部長は、2002年の事業結果と2003年の事業計画を報告した(要旨、以下の通り)。

2002年の事業報告

(1) 2つの重要社会保障事業

労働社会保障部は、下崗労働者に対する基礎生活費の支給と退職労働者に対する年金の定期支給を重要社会保障事業に決定し取り組んできた。

この背景には、下崗労働者が、1998年から2002年までの5年間に、合計200万人に達し、共産党中央委員会と国務院は、下崗労働者に対する生活費を保障する事業を重要視せざるえない状況となったことがある。労働社会保障部は、再就職センターの機能を強化し、同センターに登録した下崗労働者に基本的生活費を支給し、各種社会保険の掛け金を代入した。

また、労働社会保障部は、経営が悪化した企業の退職労働者に対しては、所属単位を通じて年金の支給を援助し、老後の生活を保障した。

1980年から2002年までに、国務院財政部は、経営が悪化した国有企業と発展が遅れている中西部地方に、この2つの重要社会保障事業に対する財政援助が含む、1840億元財政支出し、地方政府が支給額を大幅に増加することを可能にした。

(2) 省レベル政府による養老年金制度の運営

  1. 政府による養老年金制度の必要性

    1998年、国務院は、各産業・企業の養老保険制度の統一を決定した。労働社会保障部は、石炭、鉄道、郵便、通信など、11産業の産業別年金組織を省政府の運営による年金組織に移行するよう行政指導し、ほぼ達成した。

    また、労働社会保障部は、その他の国有企業に対しても、従来企業が運営していた養老年金組織を省政府の管理下に移すことを指導し、斜陽産業や赤字企業の年金保険料を軽減するよう行政指導した。

  2. 加入者

    養老保険制度への加入者は、前年と比べて220万人増加し、1億1000万人を超えた。養老保険制度を発足させた地域の比率は、1998年の35%から2002年末には99%に達したほか、15の省・直轄市では100%に達した。2002年9月末で、省レベル政府の養老保険制度への加入労働者の割合は35%である。

  3. 保険料納入額と年金支給額

    保険金納入額は、前年と比べて250億元増加し、2110億元に達し、この制度を開始以来最高額となった。

    他方5年間の総養老年金支給額は、9200億元に達した。月額年金支給額は、過去3回改定され、199年末の平均月額415元から、約50%増加し、2002年には平均625元になった。

    また、1998年には、1カ月平均6億元の未払い養老年金が発生していたが、2001年には1カ月平均2000万元にまで減少し、2002年には、農業関係の企業以外には、ほとんど未払い養老年金は発生しなかった。加えて、過去の未払い年金額の内、216億元を清算した。

(3) 医療保険制度改革の全面的な実施

1998年以来、新しい医療保険制度が発足した。これにより、企業は、経営に悪影響を与えていた高額な医療費負担から開放され、労働者も医療費の未払い問題から開放された。

医療保険制度に参加した労働者は、前年と比べて1400万人増加し、9000万人に達した。しかし、全ての労働者を一律の医療保険制度により保障するのは社会的に無理なため、地域的に、公務員医療補助制度、企業補充医療保険制度、地域的医療救済制度、工会高額医療費共済制度などが組織されている。

(4)  再就職事業の強化

国務院は、1998年以降、「合併を促進し、破産企業を整理し、下崗労働者を分散して再就職させ、人員を整理し利益を増加させるとともに再就職事業を実施する」政策の下、国有企業改革による経済構造改革を再就職事業と同時に推進してきた。

1998年以降、合計1800万人の下崗労働者の再就職を実現させた。国有企業の労働者は、100万人から5000万人に減少した。また、第2次産業から第3次産業への労働者の移動が進んだ。

労働社会保障部の指導を得て、各地方政府による就職紹介事業の初歩的な組織作りが進み、労働市場が形成されつつある。また、失業保険制度の整備も進み、全国の総失業保険収入は、前年比20億元増加し、210億元に達した。また、失業保険は、失業手当の支給の他に、再就職センターに169億元融資した。

2002年中国共産党と国務院は、全国再就職事業会議を開催し、今後の労働者の就職促進事業の中核となる「五大支柱、六個領域、十項政策」事業計画を制定し、WTO加入以後、世界的に安くて大量の人的資源を有利に活用するよう、各領域での技能労働者養成事業を計画した。

(5) 政労使三者協議制度の制定

中央と各省政府に政労使三者協議制度を設立した。また、各省労働社会保障局は、労働契約の管理、労働基準の監督、労働争議の処理を強化し、集団的労働争議を適時に調整し、企業経営と社会の安定化に努力した。

また、各地方労働と社会保障担当者は、各地域の賃金の指標を作成し、労働協約の締結、経営者の賃金年棒制の試行を行政指導した。全国の労働者の平均月額賃金は、199年の539元から2001年末には、906元に増加した。

(6)  各社会保障制度基金の無断流用問題の解決

労働社会保障部と各省政府は、社会保障基金監督機構を設立し、社会問題化していた各種社会保障制度基金の流用問題の監督業務を強化した。その結果、回収した流用基金は163億元に達し、新規の基金流用問題を大幅に改善した。

2003年の事業計画の主な内容

2003年の最重要政策課題も、2002年と同様下崗労働者への定期的生活費支給と退職労働者への定期的年金支給である。また、次の3つの事業に重点が置かれている。

(1) 下崗労働者の再就職事業の強化

2002年の全国再就職事業会議の方針に基づき、2003年下半期に全国再就職政策実施状況検査が実施される。各省政府は、上半期に、予算措置し、全国再就職事業会議で決定された諸政策を実施していなければならない。加えて、全国の再就職事業状況を把握するために、この事業に対する予算措置状況の統計を取ることが決定されている。

また、労働社会保障部は、財政部に就職・再就職事業に可能な限り予算を配分するよう働きかける責務がある。

2003年の新規雇用達成目標は、950万人(この内400万人が再就職労働者)であり、都市の登録失業率抑制目標値は、4.5%前後にある。

(2) 各種社会保障制度の改善

養老保険制度においては、下崗労働者の保険料納入問題、集団企業及び農業従事者の養老保険制度への加入問題が依然として大きな課題になっている。医療保険制度については、加入者が、1億人を突破したが、赤字企業の労働者の医療保険制度への加入問題と、低収入層への高額医療費救済制度、基本医療保険制度の設立が未解決となっている。失業保険制度においては、新規企業、私企業などで一層加入者率を高める政策が必要である。

(3) 労働者の基本的権益保護政策の推進

労働者の、各企業に対する労働法遵守の徹底、労働者の社会保障制度に加入する権利の徹底を実施する。また、労働争議を迅速に解決する法律と組織を整備する。

各地方政府所轄部門は、労働者の賃金未払い企業に対する監督を強化する必要がある。特に、春節前には、出稼ぎ農民に対する賃金未払い企業を摘発する必要がある。

また、近年社会問題化している児童労働については、雇用企業の取締りを強化する必要があるし、非合法の職業紹介企業に対する摘発も強化する必要がある。

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