タイ―マレーシア間で人材派遣期間設立で合意:出稼ぎ労働者に対する対策

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

2002年12月21日に南部ソンクラ県ハジャイで開催されたタイ・マレーシア政府合同閣議において、タクシン大統領とマハティール首相は、1.両国間の人材派遣機関の設立、2.2重国籍者の取締りなどを行っていくことなどについて同意した。

これまではタイをとり囲むミャンマー、ラオス、カンボジアからの労働力移動が盛んであったが今回の同意で新たにマレーシアが加わることとなった。

両国閣議での話し合いの内容

1.人材派遣機関「レイバー・バンク」の設置

マレーシアでは2002年のインドネシア人労働者の暴動以降、インドネシア国からの不法就労者を強制帰国させておりそのため、それに替わる外国人労働者への需要が高まっている。

合同閣議でタイ側は、マレーシア側に対して、現在3万人ともいわれているマレーシア在住のタイ人労働者に対する支援を要請した。タイ人労働者の多くは、6万~9万バーツ(約18万~27万円)という法外な仲介料を斡旋業者に支払って、海外への出稼ぎを行っている。しかし現地では職務内容や賃金、労働環境などが、雇用契約と著しく異なっているというケースが少なくない。

こうした現実を踏まえてタイ側は、労働者の登録・派遣などを行うタイ-マレーシア2カ国合同機関を設立し、マレーシアへの不法就労者をなくし、タイ人労働者の労働環境改善に努めることで両国間の合意に達したと述べている。マレーシアの経営者も、求人の掲載や、労働者のデータベース検索などが可能となる。

2002年12月には、マレーシアのプランテーション農作業員として働いていた7人のタイ人が、劣悪な労働条件に耐えかねて帰国し、タイ労働省に海外出稼ぎの実態調査と労働者への支援を求めた。帰国した出稼ぎ労働者らは、13名で農園を脱出したが、国境周辺で半数がマレーシア警察に拘束されたという。彼らは雇用契約よりも安い賃金で、劣悪な労働環境のもと、働かされていた。これらの条件に耐えかねた労働者の逃亡が後を絶たないため、経営者は労働者のパスポートを取り上げていたという。この事件の結末も閣議の中の議論に反映されたと考えられている。

2.タイ-マレーシアの二重国籍者問題

タイの南部国境地帯では、これまで議論とならなかった両国間の2重国籍取得者の取締りを強化することが決まった。タイ国内の該当者は約1万人と推測されており、安全保障上の理由(特にテロ対策)から取締りと摘発の強化を行っていく予定。

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