高い有期雇用率

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

スペインでは賃金労働者の約3分の1が有期雇用労働者で、EU内でももっとも有期雇用率が高い国となっている。有期雇用契約は毎月約100万件のペースで増えており、今後もこの状況が変化する見通しはない。

特に問題となっているのが、使用者側がコスト削減のために有期雇用を濫用するケースが見られることである。例えば同一の労働者を何回も続けて有期雇用すれば、事実上無期限で雇用したのと変わらず、しかも夏のバカンス期の直前に雇用契約期限が来るようにすれば、無期雇用労働者に対しては支払わなければならないバカンス中の給与を節約することができる。二大労組の一つである労働者総同盟(UGT)は、こうしたケースをなくするだけで有期雇用率は8ポイント下がると見ている。

スペインにおける有期雇用の問題は、欧州委員会が2002年11月に発表した「欧州雇用報告」でも取り上げられている。それによると、欧州全体の経済成長がスピードダウン傾向にある中でスペインが平均の二倍の雇用の伸び(+2.5%)を達成した一方、有期雇用が非常に多いことに警告を発している。有期雇用率の欧州平均は13.2%であるのに対し、スペインでは31.5%と飛びぬけて高く、また2位のポルトガル(20.3%)を大きく引き離している。有期雇用は通常、労働者自らが希望する雇用契約の形態でない。逆に労働者が自らの意志で選ぶケースが多いパートタイム雇用となると、スペインは欧州平均の18.9%に対して8.4%とかなり少なくなっている。

報告書はスペインにおける失業率の極端な地方格差にも言及している。この点はまさにEUが多額の構造基金の注入によって是正を目指している問題であり、スペインはその代表的な受益国である。報告書はスペインの全国雇用プランにおいて労働者の地方間移動に関する進歩がほとんど見られなかったと指摘しており、この面における更なる努力を呼びかけている。

このように、欧州全体で見た場合のスペイン労働市場の特徴は、絶対値では雇用増が見られたものの、有期雇用が多く、女性の失業率が高く、地方間格差も大きいなど、相変わらず不安定・不均衡要因が多い。

なお有期雇用の濫用に関しては、2001年12月に可決・施行された失業保障制度改正の一環として、ある企業が同一の労働者を続けて有期雇用するなど濫用の疑いが認められた場合、国立雇用庁(INEM)や自治州政府の雇用サービス機関が職権でこれを裁判所に訴え、また企業に対して当該労働者が失業期間中に受給した失業手当額の返済を要求できることになった。

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