緑の党が提唱するサバティカル制度

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

緑の党が前社会民主党政権を支持して実現を約束されたことの一つに、長期有給休暇(サバティカル)制度の導入がある。この制度は2002年2月1日から12の地方自治体で試験的に導入された。緑の党の評価によると、結果はきわめて良好で、同党は選挙運動で成果を積極的に訴えた。

緑の党が提起したのは、失業給付(賃金の80%)の85%が支給される3~12カ月の長期休暇を常勤労働者がとれるようにし、その間、代わりに失業者を雇用するという案であった。

2002年1月初めの時点では、12の地方自治体で申請者は150人しかいなかったが、6月末にはすでに1400人がこの長期休暇をとっていた。休暇期間は平均9カ月。長期有給休暇制度の恩恵を受けるのは主として、看護部門で働く50歳前後の女性である。制度運営上の大きな問題点として、賃金をかなり下回る給付を受けて休暇をとろうとする労働者に見合った失業者を見つけなければならない。雇用された失業者はもちろん、労働協約に基づいて賃金が支給される。

こうした長期有給制度の理念は、スウェーデン労働組合総同盟(LO)が以前から主張してきたもので、有名な経済学者ヨースタ・レーン氏が経済協力開発機構(OECD)の労働問題局長だった時に発案した。長期有給休暇をとる労働者は旅行、起業、サマーハウスの建設、あるいはただゆっくり過ごすことができ、代わりに雇用された失業者は自分の能力を発揮し、代用期間終了後には常勤職が得られるか、少なくとも何らかの形で働きつづけることができ、雇用可能性を高められるようにするという考え方である。使用者にとっては、常勤職を用意せずとも新規雇用者を試用できる。緑の党は、さらに長期有給休暇制度の導入が病気欠勤の減少につながることを望んでいる。

この制度の難点として、雇用のミスマッチを解決するのが非常に難しい。使用者が労働者に休暇を与えるには、有能な代替要員が確保できなければならない。そのため製造業や専門職の間では、この制度は人気がない。失業中の数学教員や正看護士を見つけることは容易ではない。一方、看護部門の中年女性はこの新制度に魅力を感じている。それは退屈な重労働から一時的に解放されたいという要求があるからで、新制度はそうしたニーズに応えるものである。病気欠勤率がもっとも高いのが看護部門の中年女性であり、休暇で長期病気欠勤が減るかもしれない。

緑の党は小さな政党ではあるが、総選挙後の議会できわめて重要な位置を占めており、議会で社会民主党に協力し与党が過半数をおさえるための交渉では、長期有給休暇制度を全国に拡大するよう求めた。社会民主党は、緑の党に長期有給休暇制度を全国に浸透させることを約束した。

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