地方自治体現業労働者、3カ年協約を2年で破棄

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

地方自治体労働者労働組合(Kommunal)は、地方自治体連合や県評議会連合と結んだ3カ年協約を破棄した。協約には、発効から2年以上経過すると破棄できるという規定がある。製造業の協約にも同様の再交渉条項が盛り込まれているが、組合側は破棄するつもりはないという。地方自治体部門の3カ年協約は2004年3月末に失効する。Kommunalは3カ年協約の3年目について、3.5%を上回る賃上げをめざす。

Kommunalは2001年の交渉で賃上げ率を1ポイント上乗せできたが、それは同労組の60万人(60万人全てが地方公共団体で雇用されているわけではないものの、賃上げは同じ協約で定められている)の賃金が低すぎるという認識があったためである。この賃上げで主に看護部門の女性ブルーカラー労働者の賃金がほどほどの水準になる。過去2年間で地方自治体労働者の賃金は、(労使交渉で取り決められた額に加えての賃上げである賃金ドリフトが大きい)製造業労働者の水準に比べ、賃上げ幅は1%下回った。また、地方自治体のホワイトカラー労働者に比べて、Kommunalの組合員は賃金が低い。地方自治体は労働者との個別交渉でホワイトカラーや上級職員の賃金を引き上げ、ブルーカラーは置き去りにしてきた。正看護士や教員の賃金は年5%以上引き上げられてきたが、Kommunalに加入している准看護士の賃金引き上げは、3.5%の賃上げに加え、54クローネの賃金ドリフトにとどまった。

Kommunalが協約破棄を決めたのは、選挙運動中に、現在左派連合を構成する社会民主党、左翼党、緑の党をはじめ、いくつかの政党が看護部門の労働者の賃金を引き上げる必要があると強く訴えたことに力を得たからだ。看護部門では、十分な教育を受けた労働者がきわめて少ない。准看護士養成学校の定員は半分しか埋まっていない。今後2010年にかけて人員不足が大きな問題になる。

ペーション首相は、今後行われる賃金交渉に首を突っ込みたくなかったが、異例の声明を出して、「看護労働者の地位を引き上げるべきだ」とするKommunalの決議を歓迎した。

カールソン労働相(産業・雇用・通信担当副大臣)はKommunalの決議に賛同していない。賃上げ率3.5%、インフレ率の上限2%という枠組み内で、異なる労働者グループの間の相対的賃金を変更するのは難しいことを承知しているからだ。もっとも労相は、交渉を行う労使双方に強力な組織があり、労使関係制度で問題を申し分なく解決できると確信している。

経済、金利、インフレなどを監視する様々な経済研究機関は首相ほど楽観的ではない。多数の地方自治体労働者の賃金を引き上げれば、それが引き金となって他の部門からも賃上げ要求が出てくる恐れがあるのは言うまでもない。教員と正看護士は、地方自治体が多数雇用している職業集団であるが、賃上げが認められなければ争議行為を行う意思をすでにはっきり示している。もっともこの数年間、彼らはブルーカラー労働者に比べれば賃金も賃上げ率も高い。教員と正看護士は5カ年協約の対象になっている。

ただし、製造業の労働者が反応しなければ、地方自治体労働者の賃金を多少引き上げても、EU加盟資格とされるマクロ経済統計の枠内にとどまることは可能と思われる。国税や地方税で賄われる公共部門の賃金コスト上昇はインフレを誘発しにくい。地方自治体の課題は、財源として、賃金と給与以外で削減可能な歳出費目を見つけるか、中央政府の補助金を獲得するかだ。

2002年12月3日、Kommunalはさらに細目にわたる要求を提示した。

「4年をかけて、地方自治体のブルーカラー労働者の高校卒業証明書が必要な職の平均賃金は、同程度の職能を必要とする技師の平均賃金と同水準にすべきである。それに向けた第一の措置として、2003年に現在の賃金格差の少なくとも4分の1を解消すべきである。長期的には、Kommunalのメンバーと技師の平均賃金を等しくする必要があり、それには5.5%の賃上げが必要である。地方自治体の成人労働者の最低初任給を月1万4000クローネ(現在1万2000クローネ)にすべきである」。

Kommunalの新たな要求は、月1万2000クローネの最低初任給が適用されている約3万人の低所得者の労働条件の改善を重視し、Kommunalメンバー内での賃金格差縮小を志向している。地方自治体連合と県評議会連合は、ただちに財源が見あたらず、賃上げ要求に応じられないとの声明を出した。

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