社会民主党新政権の労働関連政策

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

社会民主党は9月の総選挙で勝利し、連立を組むことなく議会で緑の党(環境党)の支持を得るために交渉を続け、ようやく少数政権を維持できることとなった。左翼党(旧共産党)はすでに選挙期間中に、閣外で全面的に協力することを約束していた。

ペーション首相は議会での所信表明で、労使関係分野での一連の改革を約束したが、新政権の重要な課題として最初に挙げたのは、非常に高い病気欠勤率を2008年までに50%引き下げ、政治難民と移住労働者を労働市場にうまく統合させていくことであった。

新政権は以下の課題に取り組む。

  • 賃金の80%を補償する、健康保険の所得上限を月2万3000クローネから3万2000クローネに引き上げ、リハビリ制度を改善する。
  • 失業保険の給付の所得上限を現行の2万クローネから引き上げる。どこまで引き上げるかには言及していない。
  • 2004年には労働力人口の80%を雇用する。
  • 地方自治体への政府補助金を増額して、幼稚園の教員を新たに6000人、小学校と中等学校の教員を1万5000人雇用できるようにする。
  • 臨時雇用者を減らす。
  • 社会民主党政権がすでに約束しているとおり、今後5年間で休暇を5日増やす。左翼党と緑の党は週35時間労働を党綱領に掲げており、入閣しなかった理由の一つはそこにある。

労働問題担当はハンス・カールソン副大臣

パグロツキー前貿易大臣が産業・雇用・通信担当大臣となり、同省副大臣にはメッシング氏とカールソン氏が就任した。ハンス・カールソン副大臣は、労働市場庁、職場の安全衛生、健康保険の運営を始め、労働に関するあらゆる問題を担当する。同氏の第一の課題となるのは、きわめて高い病気欠勤率を引き下げる方途を見いだすことである。病気欠勤は大きな財政負担になっており、2002年の政府支出は1050億クローネに達すると予想される。

すでにカールソン氏は、給付を削減せず(疾病給付は賃金の80%、上限2万クローネ、待機日1日)、労働生産性の向上に力を入れると発言している。同氏によれば、病気欠勤の根本的な原因は職場にあり、職場における改革が必要だという。仕事の負荷に満足していない労働者は、疾病を職場に報告する前か報告する時点で、あるいは労働時間の短縮を認められる前か認められる時点で、別の職を見つけなければならない。一度、病気で欠勤すると、復職が非常に難しい。病気が長引いた場合は特にそうで、早期退職を余儀なくされることが多い。

カールソン副大臣は、疾病給付期間を現行の14日より延長し、従業員の病気と回復に対する使用者の責任を強化する施策を講じるものとみられる。その結果、使用者が、労働環境に配慮し、従業員のリハビリにもっと関心を寄せるようになると考えられる。その補償として、使用者の健康保険料負担額が減額される。従業員の病気欠勤率が平均より低ければ、使用者にとっても見返りがある。病気欠勤の原因は不十分な職場環境にあることを多くの使用者は認めており、従業員に有給または無給の病気休暇を与えている。

健康保険の改革、職場の安全衛生サービス、病気欠勤者の復職に向けた労働市場の取り組みについて、労使は、トップレベルの対話を行っている。スウェーデン労働組合総同盟(LO)の元副委員長で団体交渉を担ってきたカールソン副大臣は、この分野で新法の制定はしないと語っている。

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