生産性連動賃金をめぐる政労使の動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

賃金決定方式をめぐって労使が対立している。使用者側は生産性に連動した賃金決定を求めているのに対し、労組はこうした動きには争議で対抗すると強く反発している。

マレーシア使用者連盟(MEF)のジャファー会長は2002年11月26日、MEFの年次賃金調査報告書を発表した際、従来の年次昇給制度に代えて、労働者の生産性に応じた報酬制度を導入すべきだと発言した。理由として同会長は、マレーシアの労働者の生産性は国際的に見て低く、国際競争を生き抜いていくには勤労意欲を引き出す工夫が必要であること、また生産性が低いにもかかわらず一律に従業員に昇給を認めている現行の賃金決定方式では、多国籍企業が国外移転するおそれがある、などを指摘した。4月の予算案の話し合いの場で政府に提案する予定だ。

これに対しマレーシア労働組合会議(MTUC)のランパック委員長は、MEFが生産性連動賃金を無理に押し通そうとすれば、労組としては「戦争」も辞さないと強行に反発している。同委員長によると、生産性連動賃金の最大の難点は、誰が労働者の生産性を査定するかという問題である。もし使用者が査定するとすれば、労働者の利益のために戦っている者は使用者の犠牲者になりかねない、という。

同委員長の懸念にはそれなりの理由がある。政府は以前、公務員に対して生産性に基づいた国家報酬制度(NRS)を導入したが、査定基準が不明瞭であったため偏重事例が横行し、結局、同制度は廃止しているからだ。

フォン人的資源相は、こうした労使の対立を踏まえて、同省が3年前に提案した、定期昇給制と生産性連動制を折衷した賃金決定方式を民間企業が速やかに採用するよう促した。その方式では、定昇部分については、労働者のニーズと会社の安定を勘案したうえで、勤続年数に応じた賃上げを保証し、生産性連動部分については、一定の目標を達成した場合に手当やボーナスというかたちで定昇部分に上乗せする。

フォン大臣は、定昇部分があることで、MEF案と較べて現行制度に近く、使用者にとっても制度移行は容易なはずだと述べ、早期に採用するよう促した。

なお、この政府案が提案された3年前に、MTUCも支持を表明している。

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