闇労働対策の効果上がらず

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

使用者による闇労働の正規化の申請は800件強(労働者数にして1,500人弱)にとどまった。闇労働の正規化措置を導入した最初の法律である2001年10月18日法律383号の施行から1年を経た現在、その効果はほとんど上がっていない。引き続き改善策が模索されているものの、同法は、企業や納税者からほぼ完全に無視された形だ。

同法に関するデータは、当初からあまり芳しくなかった。今年3月までに正規化の申請をした使用者は159名、これにより正規化された労働者が430名、把握された労働コストは約400万ユーロである。6月末までの正規化の申請は302件、労働者数にして800名、把握された労働コストは約800万ユーロである。10月末までの申請数も800件、労働者数にして約1,500名にすぎず、依然として状況の改善はみられない(これは公式のデータではないが、経済省のデータから推定されるものである)。

同法は、今のところ、闇労働の正規化を強く推し進めていた政府、同法の発案者であった経済省、正規化の機会を利用することを知らなかった(あるいは利用するつもりもなかった)使用者や労働者などの関係者すべてにとって、失敗に終わっている。失敗の理由の1つとして、闇労働を監視し、正規化支援活動を遂行する様々な組織の間で権限が錯綜し、また組織間の関係が混乱していることが挙げられる(表参照)。さらに、イタリアの多くの地方自治体では、監視や支援のための組織を欠くか、存在しても利用できる財源が乏しいために機能していないのである(注1)。2002年9月25日暫定措置法210号では、CLES(労働正規化委員会)の創設が定められたが、事実上画餅に終わっているし、また設立されたとしても、組織の複雑化に拍車を掛けるだけであろう。

一方、INPS(全国社会保障公社)による監視活動は、継続的に実施されている。今年の1月から8月の間に、必要な届出をしていない企業5万2000(検査を受けた企業の59.6%)、未届けの労働者8万7000(うち7万6000が非合法)が確認された。未納付の社会保険料は4億7700万ユーロに上っている(うち、非合法労働に関するものは1億8300万ユーロ)。

表 地方自治体の正規化支援組織
CLES 全国闇労働正規化委員会 INPS監視委員会
法源 2002年9月25日
暫定措置法210号
1998年12月23日
法律448号78条
1998年INPS決定18号、1999年INPS決定26号、2000年INPS決定258号
設置場所 県労働委員会 商工会議所 州のINPS局
設置レベル 県レベル 州および県レベル 州レベル
権限 個別正規化計画の受領、調査および承認等 地域に関する分析、相互理解および強調の促進、租税優遇措置を受けようとする企業への支援等 社会経済組織の研究、
国内総生産や人口の
分析、労働契約類型や
経済データの研究、「闇」
領域の特定、提言の表明

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