移民に関する新法
―労働法の側面

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

今年9月10日に、2002年7月30日法律189号(いわゆるBossi-Fini法)が施行された。同法は、移民保護に関する旧法を修正するもの。同法の法案報告書の説明によれば、「長引く失業および劣悪な就業状況に苦しみ、飢えた人々がヨーロッパに押し寄せるという危機」(法案報告書)のために、ここ10年間に、地中海に面した諸国では、他のEU諸国に比べ10倍以上もの人口増加が生じた。他方で、労働力の搾取を伴う闇労働の増加、密貿易のための闇労働の利用、売春や人身売買といった違法な現象の蔓延がある。

こうした問題に直面して、密入国を減らし、「地中海諸国で生じた経済格差を削減することにより、より貧困な国々の生産力に刺激を与える」(法案報告書)ため、旧法を修正するのが適切であるとされている。修正によって「実効的な協力体制を整え、就業に関するグローバルな政策を実施するための計画を作成する」(法案報告書)ことができると考えられたのである。

このような目的を達成するために、新法で採用された重要な制度として、滞在契約、移民統一窓口の導入、不法滞在者追放処分の速やかな実行などがある。このほか、不法移民への対処の実効性を高めるために、移民出身国に対するインセンティブを付与し、あるいは、不法移民を利用する者(移民の運搬人や「闇」で労働者を雇う使用者)については厳罰をもって臨むなど、様々な分野について修正が施された。また、国外追放処分の終了期限前にイタリアへ再入国した者に対する厳しい処罰や、不法入国者を積んだ貨物船を阻止するための海軍の利用、滞在許可証の発行時におけるEU域外の者に対する指紋採取、家政婦および介護者のための合法化措置も定められた。

イタリアへの入国および滞在

イタリアへの入国に関しては、ほとんど変更されていない。すなわち、イタリアへの入国を希望する外国人は、有効なパスポートまたはこれに類する書類、出身国または定住所を有する外国のイタリアの外交代表または領事によって交付された入国ビザ、および、滞在期間中についての十分な生計手段を有していなければならない。

これに対し、滞在許可証に関する規制は大きく変更された。まず、滞在許可証の交付の際に、指紋が採取されることになった。また、労働目的の滞在許可証とそれ以外の目的の滞在許可証とが区別されることになった。労働以外の目的で交付される滞在許可証の期間は、入国ビザで定められた期間と同じである。つまり、観光目的の場合は最高3ヶ月、修学および教育訓練目的の場合は最高1年(1年ごとに更新可能)、家族との同居の場合は2年、そしてこれ以外の目的の場合は、書類で証明された必要な期間を超えない期間である。

労働目的の滞在許可証の交付は、滞在契約を締結していることが要件となる。法案報告書で説明されたように、「外国人が一定期間滞在するために、イタリアへ入国し逗留することは、…安全で合法的な労働活動を、一時的または延長された期間に、実質的に遂行する場合にのみ」(法案報告書)認められる。この条件を守ることによって、外国人には、労働および宿泊に関する適切な境遇が保証されるのである。

労働目的の滞在許可証の期間は、滞在契約で定められた期間で、次の期間を超えないものである。

  • 1ないし複数の季節労働につき9カ月。
  • 期間の定めのある従属労働1つにつき1年。
  • 期間の定めのない従属労働1つにつき2年。
  • 独立労働につき2年。

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