知識集約型経済へのマスタープランを発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

マレーシア国際問題戦略研究所(ISIS)は9月9日、知識集約型経済(K–エコノミー)への移行を進めるためのマスタープランを発表した。136件の提言のうち64件が人的資本開発に関する提言となっている。年7%の経済成長率を達成させつつ、2020年までに知識集約型経済への移行を目指す。提言の一部は、来年度の予算案にも反映された。

知識集約型経済への移行計画は、もともと2000年3月にマハティール首相が提唱したもの。情報化とグローバル化が進む国際社会のなかで持続可能な成長を維持するためには、物的な生産要素の投入に依存してきた経済構造から脱却して、知識、創造力、イノヴェーションを駆使した知識集約型経済へと移行しなければならないとの認識からだ。

首相の提唱以来、2年以上の期間を費やして、政府の研究機関であるISISがマスタープランの策定にあたった。今回の発表の際、ISISのノルディン・ソピー会長は、「マレーシアはマスタープランに即して、世界有数のK–エコノミー国家へと躍進する」と豊富を語った。

個々の提言は136件にのぼるが、マスタープランは7つの戦略的骨子として以下を掲げている。

  1. 人的資本を開発し確保する。
  2. 知識集約型経済への移行を推進するのに必要な機関を設立する。
  3. 経済の全部門で知識を適切かつ持続的に活用することを促す誘因、社会資本基盤、情報基盤を確保する。
  4. 経済の全部門で科学と技術を獲得し応用する能力を劇的に向上させる。
  5. 知識集約型経済への移行において民間部門の指導的役割を確保する。
  6. 公的部門を知識集約型行政サービスへ発展させる。
  7. 知識・情報格差を是正する。

136件の提言のうち約半数にあたる64件が人的資本開発に関わるものだが、人的資本開発については、1.国民教育の質を向上させる、2.職業訓練・再訓練プログラムの利用可能性と質を向上させる、3.中核部門の需要に見合う専門性・技能を有する外国人を採用する-の3つを柱とする。

マスタープランの策定を指導した財務省のシャフィー副大臣は、とくに長期的に見た場合、教育制度の質を持続的に向上させて思考力と革新力を養成し、それをマレーシア経済の発展にいかに寄与させるかが最も重要になるとの見方を示している。

マスタープランの第1階はすでに昨年から実施に移されており、第2段階は2004~06年に、第3段階は2007~10年に実施される。

2003年度予算案にも反映

政府は9月20日、2003年度(112月)予算案を発表した。外資誘致を目的とした大幅な減税措置を盛り込む一方、国内企業に限定した優遇措置も多く、国内企業の投資に基づく内需を成長の核に据える方針が読みとれる。

まず外資については、国内に本社や事業本部を置く企業については、事業所得税を10年間全額免除する。

国内企業については、中小企業向けの法人減税が柱となっている。振込資本金が250万リンギ未満の企業について、課税対象所得10万リンギまでの法人税率を28%から20%に引き下げる。

また、知識集約型経済への移行を促進するため、コンピューター、ソフトウェア、航空、バイオテクノロジーなどの分野で知識・ハイテクを駆使し、高付加価値を生み出している企業に「戦略的知識集約型経済ステータス」を付与し、100%の免税措置を実施する。

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