欧州委員会、欧州雇用戦略の評価に関するコミュニケを公表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

欧州委員会は、2002年7月に欧州雇用戦略の5年間の評価と同戦略の今後のあり方等をまとめたコミュニケを提示した。

欧州雇用戦略は失業問題に対処するためにおよそ5年前に開始された。今回のコミュニケは、欧州労働市場の5年間の動向と加盟各国により実行された政策を評価し、今後の雇用戦略のあり方をめぐる議論のたたき台を提供するものである。

内容

コミュニケは(1)コミュニケの目的(2)欧州雇用戦略の経緯等(3)欧州雇用戦略に対する評価と将来の欧州雇用戦略をめぐる課題の3部構成。

欧州雇用戦略の評価の部分でコミュニケは、1997年以降に新たに創出された雇用が1000万人分以上に及び、失業者数も400万人以上減少したことから、欧州労働市場の状況が改善したと見ている。また労働市場は以前よりも経済的・社会的変化により迅速に対応できるようになっており、このことは欧州労働市場の柔軟性を反映したものといえる。こうした労働市場の改善がどの程度欧州雇用戦略に起因するのかは明らかにされていないが、加盟各国が雇用指針に沿って雇用政策を変更したことが大きな影響をもたらしたと分析されている。特に教育訓練や長期失業への予防的アプローチについて積極的な取り組みが確認された。

コミュニケは、欧州雇用戦略の以上のような成果を評価する一方、今後より考慮すべき点として予防的・積極的アプローチの有効性の検討、教育・訓練格差拡大の危険性等を挙げている。

また雇用戦略の実施において、いわゆる「開かれた調整方式」が大きな役割を果たした。これは、共通の目標を設定し、多くの関係当事者が参加し、その過程を監視し報告するというものである。この方式が関係当事者の参加を可能とし、様々な雇用政策についてよりよい協調がもたらされた。特に、政策形成・実施にあたってソーシャル・パートナーの参加が進展した点が強調されている。

次に将来の雇用戦略の課題の部分では、これまでの議論を踏まえ、欧州雇用戦略を改革するにあたって次のような論点が示されている。すなわち、政策課題に対応した明確な目標設定の必要性、効果を弱めることなく政策指針を簡素化する必要性、雇用戦略実施にあたり統治と協調の必要性、他の関連施策との一貫性・補完性確保の必要性である。

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