国際自由労連がWTOにオーストラリアの労働基準に関する報告書を提出

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

国際自由労連(ICFTU)は、WTO加盟国が中核的な労働基準を尊重すると宣言して以来、一連の報告書を作成しWTOに提出してきた。

その一環としてICFTUは2002年9月にオーストラリアが国際的に認知されている労働基準を遵守しているかどうかを検討した報告書を明らかにした。

報告書の内容

報告書は、1.結社の自由と団体交渉権、2.差別と平等賃金、3.児童労働、4.強制労働-を主な対象とし、その各々についてILO条約との関係や現状について検討している。

1.の結社の自由と団体交渉権については、オーストラリアが結社の自由と団体交渉に関するILO条約(第87号、第98号)を批准しているにも関わらず、多くの連邦法がこうした国際的な労働基準の適用を損なっていると指摘している。特に連邦職場関係法の中のオーストラリア職場合意(AWAs)やストの制限強化部分、労働者救済方法の限定などを取り上げ、中でもAWAsについては詳細な検討を行っている。こうした問題はILOでも議論され、オーストラリア政府に対していくつか勧告を行っている。

2.の差別と平等賃金に関して、オーストラリアはILO第100号条約(男女同一価値労働同一賃金に関する条約)と第111号条約(雇用及び職業に関する差別待遇に関する条約)を批准している。しかし報告書では、これらを対象とした国内法が存在するにも関わらず、女性は労働条件面で、原住民や移民は雇用機会面で差別を受けていると分析している。例えば、原住民の失業率は国内平均のおよそ6倍に及び、賃金も約半分であるという。また、人種差別事件のうち30%が雇用における差別を理由としている。

他方、女性については賃金格差が課題とされている。特に、男女間職務分離や訓練機会の不足等が問題として挙げられている。

3.の児童労働については、オーストラリアはILO第138号条約(最低年齢に関わる)と第182号条約ともに批准していない。就労可能最低年齢については明確な国内法はないものの、義務教育に関わる法令が事実上規制を行っている。そのため国内で多くの児童が働いているとの情報はないが、農業部門等ではある程度の児童労働が確認されている。また1999年には「搾取工場」での児童労働が発覚し、いくつかの州では規制が強化された。

4.の強制労働に関しては、オーストラリアはILO第29号条約(強制労働)と第105号条約(強制労働廃止)を批准している。強制労働を特に禁止する法律はないが、国内で強制労働が報告される例はほとんどみられない。ただ囚人の強制労働、女性や子供の強制売春が問題となっている。

報告書は以上の内容に従って提言を行い、その上でオーストラリア政府に対し中核的労働基準に関する定期的報告をWTOとILOに行うよう求めている。

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