有給出産休暇制度をめぐる議論

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年11月

連邦政府は有給出産休暇の制度化を検討しており、これを受けて連邦性差別委員は2002年4月に様々な選択肢を示した「Valuing Parenthood: Options for paid maternity leave」という中間報告書を提出した。性差別委員は報告書を公表する際に、OECD諸国の中で全国的な有給出産休暇制度を設けていないのはオーストラリアとアメリカだけであると指摘した。2002年11月末までには本報告が連邦政府に提出される予定となっており、その間に様々な団体や個人との協議が行われている。

ACTUの提案

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は7月になって有給出産休暇制度に関する独自の提案を行い、この問題に関わる論争に加わった。

ACTUの提案は、働く母親に14週間の有給出産休暇を付与するというものである。費用は政府と使用者に対する賦課金でまかなわれる。つまり政府が最低賃金額(現在は週431豪ドル)までは負担し、そして使用者の拠出する賦課金が当該労働者の賃金(あるいは平均賃金)との差額分を負担する。これにより87%の女性が休暇中にそれまでと同様の支払いを受けることが可能になるという。

これに対し使用者団体の反応は芳しくなく、オーストラリア商業産業連盟(ACCI)は使用者が賦課金の負担を受け入れられないと述べている。使用者団体の見解では、出産や家族の問題は国家あるいは個人の問題ということになる。従って、使用者サイドは賦課金の支払いには明確に反対している。

職場関係省長官は義務化に反対

アボット雇用職場関係省長官は、現政権下では強制的な有給出産休暇制度が実施されないであろうとの見解を示した。彼は任意の有給出産休暇制度は認めたものの、その義務化には反対の姿勢を示した。現在、連邦政府は性差別委員が示した選択肢に要する費用を算定している。

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