EU加盟国の労働コストに関する欧州労使関係観測所と報告

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

欧州労使関係観測所(EIRO)は、1999年から2001年までの労働コストの推移を検討した労働コストに関する年次報告最新版を公表した。労働コストの問題は、EU拡大とともに投資や生産、雇用政策、団体交渉にも大きく関わるようになっており、EIROはこの報告によりEUの労働コストのレベルやその趨勢を幅広い視点で示すことを意図している。

報告の内容

労働コストの定義は、使用者が労働者を雇用するために負担する総費用を指すとされている。EIROは分析にあたり、Eurostat(欧州統計局)等の調査結果を用いている。また、報告は、総労働コストだけでなく、労働コストを直接報酬(ボーナスを含む)と使用者に支払いが義務づけられている社会保障負担金、その他に分けて分析している。

第1に総労働コストに関しては、EU加盟国にノルウェーを加えた16カ国の中で時間当たり労働コストが相対的に高かったのはオーストリア、ベルギー、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、スウェーデンであり、他方労働コストが相対的に低かったのはイタリア、スペイン、ギリシャ、ポルトガルであった。

次に労働コストをいくつかに分けた分析を見ると、データが入手できた11カ国平均で直接報酬が総労働コストに占める割合は73.8%であった。ほとんどの国でこの割合は70%を超えていたが、ベルギーだけが57.4%という低い数値であった。

さらに1999年から2001年にわたる平均時間当たり労働コストの年間上昇率の推移を見ると、1999年に3.3%、2000年に3.8%、2001年に4.3%を記録している(ノルウェーを除く加盟各国平均)。このように平均値では労働コストは上昇傾向にあるといえるが、その状況は各国によってかなり異なっている。またこれを労働協約を通じ合意された平均賃上げ率と比較すると、前者が後者を上回っていることが確認できる。すなわち、平均賃上げ率は1999年には2.9%、2000年には3.2%、2001年には3.5%であった。両者の差はこの3年間に拡大しており、賃金以外の労働コストの増加が予想される結果となった。

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