欧州委員会、補完的年金問題についてソーシャル・パートナーと正式協議

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

欧州委員会は、2002年6月に人の自由移動を妨げている補完的年金問題についてソーシャル・パートナーとの第1次協議に入った。補完的年金のポータビリティが特に課題となっており、欧州委員会はこうした問題についてEUレベルの施策が必要かどうかソーシャル・パートナーの見解を求めている。

問題点

労働者が転職する場合、補完的年金資格との関係で多くの難題に直面することになる。労働者の年金権や受給資格は、労働者が一定の要件(例えば最低加入期間や加入のための待機期間など)を満たした場合にのみ保障される。従って転職やキャリア・ブレイクにより、補完的年金権の取得は困難となりがちであるし、仮に年金権を取得できた場合でも多くの不利益がある。

加えて労働者の年金原資の移動にも課題があり、特に国境を越えた移動が問題となっている。

協議内容

第1次協議開始にあたり欧州委員会は、補完的年金制度について以下の3事項に焦点を当てている。(1)年金権の取得と維持、(2)年金権の移動可能性、(3)年金制度の国境を越えた資格である。そして欧州委員会は、補完的年金権のポータビリティに関しEUレベルの施策が必要であるか、それはどのような形式を採るべきか(労働協約か指令か等)、その主な特徴などに関しソーシャル・パートナーの見解を求めた。

この協議はローマ条約138条に基づくもので、欧州委員会はソーシャル・パートナーの見解を聴き、その後にEUレベルの施策が妥当かどうかを決定することになる。決定が行われると、ソーシャル・パートナーは再びその提案の内容について協議を受けることとなる。

欧州委員会によると、2000年に現在の使用者の所で働いている期間が1年未満の労働者の割合は、EUで16.4%であったのに対し、米国では30%であった。今回の決定は、労働者の移動を妨げている障害を除去するための同委員会の戦略の一部を構成する。

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