連邦政府の労使関係改革案をめぐって

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

オーストラリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年9月

連邦政府は労使関係改革案を継続的に議会に提出しているものの、そのほとんどは実現をみていない。法案成立には上下両院を通過する必要があるのだが、自由・国民党は上院で過半数を占めていないため、重要法案については上院の少数政党と協議しなければならない。少数政党は自由党に比べ労働者保護に熱意を持っており、労使関係改革法案をめぐる交渉は難航しがちである。しかし、自由・国民党連立政権は労使関係改革に積極的な姿勢を示し、より強い権限を求めるようになっている。

2002年4月には職場関係法の不当解雇禁止条項改正案が提出され、さらにストライキ(IIの「自動車産業での緊張高まる」と関連)にも政府が積極的に介入するようになっている。

またアボット雇用職場関係省長官は、労使関係制度一元化の出発点として不当解雇禁止条項改正に乗り出している。多くの識者は、オーストラリアの労使関係制度(連邦の制度とともに州の制度が併存)が複雑であると指摘している。問題は、州と連邦の権限の分配が連邦憲法に定められた労使関係権限により強固に守られていることである。これはオーストラリア労使関係委員会(AIRC)に州際労使紛争の仲裁について中心的な役割を与えており、そのため連邦政府はAIRCの活動を規制することはできるが、それを廃止したり、州と連邦の権限分配を無くすことはできない。その結果、ニューサウスウェールズ州などでは連邦よりも強力な不当解雇禁止法が制定されている。

そこでアボット長官は、連邦憲法の「法人権限」の利用を提案している。法人権限は、連邦政府に対し連邦内で組織される海外法人や商事・金融会社に関わる立法権限を与えている。長官はすべての法人に適用される不当解雇禁止法を制定する際にこの権限の利用を提案し、将来的にはその範囲を他の分野にも広げようと考えている。問題なのは、法人である使用者が全体の約6割に過ぎないことである。いずれにせよ、州政府から権限を奪うこうした試みは大きな反発を受けると思われ、最終的には最高裁まで争われることとなろう。

雇用職場関係省、4つの法案を提出

雇用職場関係省は2002年6月26日に4つの法案を議会に提出した。そのうちの2つは職場関係に関わるもので、職場協定(認証協定とオーストラリア職場合意)の締結を容易にするためのものと、違法な争議行為に対する効果的な救済措置を提供するものから成っている。残りの2つは安全衛生に関わるものである。

2002年9月 オーストラリアの記事一覧

関連情報