採用における妊娠者別に関し、労働裁判所が重要な判決

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年8月

ある仕事への応募者の中で最も適格な労働者が妊娠している場合、間もなく有給出産休暇を取るであろうことを理由に、その従業員にポストを与えることを避けてはならない。これが2002年4月3日にスウェーデン労働裁判所が下した画期的判決である(機会均等オンブズマン(JAMO)対Vastmanland郡会事件)。この判決は、スウェーデン労働市場全体における新規スタッフ採用すべてに直接的な影響を及ぼすだろう。

JAMOは、自らが賃金差別とみなした事件に関して労働裁判所で何度も敗訴してきた。これまでのところ、そのような事件9件のうち7件に敗訴している。その理由は、労働裁判所が三者構成であるためだろう。裁判官の過半数を構成する労使代表らは、第三者が賃金決定プロセスに関与することを嫌う。したがってJAMOは、賃金差別事件は労働裁判所の所管からはずし、地方裁判所が扱うべきだと主張している。

しかし、賃金に関係のない今回の妊婦の権利問題に関しては、三者構成の労働裁判所は全員が同意見で、組合代表と使用者代表が専門職裁判官に同意した。「今後、若い女性は就職面接で子どもを(もっと)産むつもりかどうか聞かれたら、『どうしてそんなことを聞くのか?』と聞き返すことができるし、そうすべきだ」と、勝訴した弁護士であるJAMOのボルグストローム氏は言う。

当該事件は、妊娠中に応募した助産婦に関するものだった。この助産婦は高い技能を有する求職者だったが、その職務はより能力の低い助産婦に与えられた。これは明らかに使用者が、妊娠した助産婦の来るべき出産休暇中に代理を探すという問題を抱えたがらなかったからである。

労働裁判所はEU均等待遇指令に基づいて判決を下した。このEU指令の内容は後にスウェーデン機会均等法に組み入れられている。裁判所は郡会に対し、この不当な扱いを受けた助産婦に5万クローネの損害賠償金を支払うよう命じた。

当の助産婦は、郡の仕事に就けなかったことを嘆いてはいない。助産婦の就職状況は非常に好調で、別の郡で別の仕事を見つけるのは難しいことではなかった。裁判所が事件を処理するのに時間がかかっている間に、その助産婦はすでに第二子をもうけている。

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