政府、2002年7月1日より失業保険給付引き上げを決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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予想されたよりも早い2002年4月23日に、政府は失業保険改革案の詳細を発表した。この発表は、旧共産党および緑の党との交渉を経て行われた。2002年7月1日から、給付上限と給付下限の両方が引き上げられる。

給付下限は1日当たり50クローネ増額され320クローネとなる。給付上限は、月給2万0075クローネの80%に当り、失業期間の最初の100日間は1日730クローネ(50クローネ増)に、101日目からは1日680クローネ(100クローネ増)になる。これらの案件を決定する財務大臣によれば、新しい給付上限では、賃金の8割に当る全額支給を受ける従業員の割合が72%になり、現在の40%を大きく上回る。

2002年初め、社会民主党大会は、「経済状況が許せば」失業保険を改善すべきだと決議した。現在、財務大臣は過去数週間に失業保険収支に着実な改善が見られたとしている。職業安定所の効率が向上して失業期間が短くなり、より多くの失業者がそれまで働いていた産業部門ではなく他の部門で職を探し、不況の分野から成長分野で就職するようになった。つまり、失業給付を受ける労働者が相対的に減少したため、追加予算配分なしに制度内で給付増額の資金を調達できるのである。また明らかに、失業保険の運営も規則に従ってより厳格に行われるようになった。規則によれば、職安で紹介された最初の仕事を断れば給付が減額され、2回目の仕事を断ればさらに減額される。そして最終的には、3回目に断った時点で一切支給されなくなる。

ブルーカラー労連のスウェーデン労働組合総同盟(LO)は、この改革を歓迎しながらも、次のように主張する。その都度特別な政治的決定を下さなくても、給付を引き上げられるようにすべきである。また、給付増額は物価にスライドさせ、賃金動向に従うべきである。

ホワイトカラー労連の職員労働組合連合(TCO)も、給付の物価スライド制を要求している。専門職の組合連合団体の大卒専門技術労働者労組連合(SACO)は、給付増額を歓迎する一方で、SACO組合員の80%が新しい給付上限をはるかに上回る給料を得ていることを指摘する。したがってSACO組合員は、より賃金の低いブルーカラー労働者やホワイトカラー労働者と同様に、給料全額について同じ率で給与所得税を支払いながら、8割給付を得るために補足保険に加入し続けなければならない。SACO組合員は雇用期間中の所得の一定割合を上回る部分については80%の給付を受けない。しかし、この部分に対応する給付をすべて税金でまかなうべきであると主張する。

今回急いで導入された給付改革は、収支均衡を原則としているため、現在の経済情勢が引き続き改善されれば、政府は9月の選挙前に再びこの問題を取り上げ、さらに給付を増額する可能性がある。賃金の高い熟練労働者やホワイトカラー労働者、専門職労働者は失業率が非常に低い労働者グループである。そのため、失業保険給付条件の改善で、これらの労働者を満足させるにはあまりコストがかからないことから、そのような措置が政治的な魅力的な選択肢となる可能性もある。

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