現代自動車で2002年の賃上げ交渉終結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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現代自動車では2001年に続いて2002年の賃上げ交渉でも全面ストの直前に妥結した暫定合意案が組合員投票で否決され、振り出しに戻る現象が繰り返されている。2002年の賃上げ交渉の流れを追ってみよう。

まず、現代自動車労組は賃上げ案として、「(1)賃金12万8880ウオン(通常賃金基準で10.1%)引き上げ、(2)当期純利益の30%を組合員に配分、(3)1998年の経営危機の際に未払いの成果給を支給する」ことなどを要求した。これに対して、経営側は「(1)賃金7万7800ウオン引き上げおよび諸手当1万2200ウオン引き上げ、(2)経営目標達成の際の成果給2ヶ月分および交渉妥結の際の一時金100万ウオン、(3)1997年の未払い成果給などを支給する」案を提示した。

同労組は5月27日、「7回目の賃上げ交渉が決裂したのを受けて、争議発生を決議し、中央労働委員会に争議調停申請を出した」と発表した。その後、6月17日まで時限ストを続けた後、6月18日から全面ストに突入すると警告し、経営側に圧力をかけた。

労使は全面ストの直前まで交渉を続け、経営側の大幅な譲歩で次のような暫定合意案を見出した。その合意には、(1)賃金9万5000ウオン(諸手当含む)引き上げ、(2)成果給2ヶ月分および一時金150万ウオン、(3)1997年の未払い成果給1.5ヶ月分、(4)非正規職労働者に対する成果給2ヶ月分および賃金8%引き上げなどが盛り込まれた。

ワールドカップ大会期間中であることもあって、経営側はストの長期化により、企業の対外的信用が失墜し、完成車に対する不信が広まることを恐れ、早期妥結を優先したようである。ただし、収益向上に伴う成果配分の性格が強いとはいえ、このような大幅な賃上げは下請け協力会社のそれとの格差をさらに広げてしまうという非難の声もあがっている。

しかし、このような大幅な賃上げ案さえも6月21日の組合員投票で否決されてしまい、労使は再交渉を余儀なくされている。労組内部の現場組織の間では、成果給の金額よりは、それを旧盆休み・年末・旧正月休みなどに分けて支給することで合意した案に不満の声が高まっていたといわれる。「交渉締結権」を組合員側に帰属させることは、労使交渉での交渉代表による密室談合を防ぎ、労組の民主化を支えるには有効である反面、それが行きすぎると、労組内部での派閥争いの道具にされ、労使交渉をこじらせてしまうことも十分考えられる。早くもその是非が問われている。

注:6月27日に「成果給の支給時期を1、2カ月ずつ繰り上げることにした」新たな暫定合意案が組合員投票にかけられ、今度は58.14%の賛成で可決し、労使紛争はようやく終結した。

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