アロヨ政権の失業対策の現状

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年6月

アロヨ政権は、失業問題を重要視し、海外への就職の斡旋と農業部門の雇用増加を重点的に雇用対策事業を展開している。

2001年の職業紹介事業の概況

2002年2月27日、労働雇用省(DOLE)は、2001年、様々な雇用対策事業により、雇用増加計画の目標値、110万人の79%は達成できたと発表した。DOLEの労働統計局(BLES)の報告によると、全体で、86万4767人が、公共の職業斡旋機関より就職を斡旋され、5万6213人が自営業になり、1万3317人が、公共の職業訓練所で技能訓練を受けた。また、DOLEは、マニラ首都圏への人口の集中を防止するために、地方での職業紹介事業を重要視してきたが、66万3759人が、地方で職を得ている。

一方、DOLEは、2001年、労働市場において不利な労働者(身体障害者、解雇された労働者、地方からの出稼ぎ労働者、海外で失職し帰国した労働者、学校を中退した学生等)に対する、特別プログラムを実施し、12万796人が就職した。

マニュエル・G・イムソン労働雇用次官は、DOLEの職業紹介事業への努力は、省庁間で構成される雇用促進事業により一層効果的なものになると述べ、全国の雇用環境は、2001年末より、就労機会開拓と解雇抑制への行政指導により改善しつつあると説明している。

全労働者数は、2000年の27.4百万人から、6.2%増加し2001年は、29.1百万人に達した。しかし、総労働力数が増加し続け、32.8百万人に達し、失業率は10%前後で相変わらず高い。

海外への労働者送り出し政策の実状

現在のフィリピンの経済成長では、急速な労働力人口の増加に見合う雇用機会を生み出すのは非常に困難な状態にある。このため、アロヨ大統領は、2002年、新規の海外出稼ぎ労働者を年間100万人にするという政策目標を打ち出している。また、Sto.トーマス労働雇用大臣によると、2001年、海外での就労機会の開拓と情報提供により、6万5518人の失職した労働者が海外での再就職機会を得ている。

ただし、海外人材派遣会社協会(FAME)の関係者は、アロヨ大統領の政策目標は、達成不可能だと批判している。この背景には、最近、DOLEが、悪徳海外人材派遣業者の排除を目的に、海外への職業紹介業務に関する事業登録料を100万ペソから200万ペソに増額決定したことがある。これにより、小規模の人材派遣会社が営業を停止せざる得ない状態になった。FAMEの関係者は、DOLEが、解雇された労働者を海外で就職させる政策を強化しようとすれば、海外人材派遣事業に対する理解と規制緩和が必要であり、政府目標は、小規模の民間の斡旋業者の営業努力なしに達成するのは不可能に近いと訴えている。

農業部門での雇用増加計画

アロヨ大統領は、2001年6月の最初の施政方針演説において、「2004年までに、農業部門で100万人の雇用を創出する」と公約し、委員会を設立し、様々な政策を打ち出している。2001年第3四半期の失業率は9.8%になりやや改善したが、これは、農業部門での雇用の増加が、製造業で増加した失業者を吸収したためである。アロヨ大統領の農業重視の政策の効果が現れていると見られている。100万人雇用創出委員会の資料によると、2001年10月から2002年2月までに穀物と畜産生産部門で、16万4288人の雇用が創出された。

この公約実現のために、アロヨ大統領は、農業と水産業の現代化を促進することを目的に毎年200億ペソを財政投資するという公約を打ち出している。100万人雇用創出委員会の顧問のテッチ・カペランは、新技術を農業に導入し農業の生産性を改善する事により新規雇用を創出するという政策の重要性を強調している。農業関係者も、政府が、有益な総括的農業改革事業に政策を集中し、有効な土地改良事業や耕地整理事業に低利融資を実施すれば一層の雇用を創出できると予想している。また、下院の地方議員は、この事業に対する国民の継続的な支持を得るには、財政投資の地域的な配分と農業労働者の賃金や雇用契約の内容に配慮する必要があると主張している。

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