ACUT、雇用における遺伝子情報の保護を求める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

オーストラリア法改革委員会とオーストラリア医療倫理委員会は、遺伝子情報の保護に関わる法的・倫理的問題を調査・検討することになった。両者は、協議会や公聴会を通じ、この問題に対する国民の意見を広く聴いた上で、2002年6月末日には政府に対して報告を行う予定となっている。焦点となっているのは、主に遺伝子情報のプライバシーを保護するための、あるいは遺伝子情報の不適切かつ差別的な利用から保護するための法律が必要であるかどうかである。

これを受けてACTU(オーストラリア労働組合評議会)は意見書を提出し、使用者が遺伝子テストから得られる情報を求めたり、収集したり、開示することを禁止するよう提言した。

意見書の内容

まずACTUは、意見書の内容が雇用関係の文脈で使用者による遺伝子情報の収集・開示・利用に関わる問題に限定されると前置きしている。その上で、現時点では使用者が労働者に対し遺伝子テストの実施やその情報の提供を求めるに足る、やむにやまれない事情が存在するとは思えないとしている。

さらに意見書は、現行法の問題点を指摘している。第1に差別禁止法については、現時点で何の症状もない労働者に適用されるかどうか不明である。第2に職場関係法は、身体的・精神的障害を理由とした解雇を禁止しているが、何らかの障害につながる遺伝的傾向を持っていることがこれに含まれるかどうか大いに疑問である。

このようにACTUは、現在の連邦や各州の差別禁止法あるいは労使関係法がこの問題に十分対処しきれていないとの見解を示し、次いで職場における遺伝子テストの義務づけや現行プライバシー法における問題点を検討している。

その上でACTUは次の3つの提言を行っている。

①労働者あるいは求職者が遺伝子テストの提出、または遺伝子情報の開示を拒否したこと、③使用者により保有されている労働者に関する遺伝子情報、に基づく雇用関係における差別を禁止する特別法を制定する。③使用者が労働者または求職者の遺伝子テストから得られた情報を求めたり、要請したり、収集したり、開示することを禁止する。

現行の連邦プライバシー法は、従業員記録を適用除外としているが、従業員記録も対象とすべきである。少なくとも医療情報や遺伝子情報などのセンシティブな情報は対象にすべきである。

ACTUは遺伝子テストと遺伝子情報の収集に関わる問題が複雑で微妙であることを認識しながらも、こうした情報の利用を使用者に認めることの危険性を強調している。

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