2002年第1四半期、失業率は高まる予測
―建設業、ホテル業などで失業増加、TDRI予測

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

タイ開発調査研究所(TDRI)は、2002年第1四半期の失業率は5.2%、失業者は159万人に達すると予測している。本誌1月号でお伝えしたように電子・家電産業での解雇が続いている他、建設部門や銀行部門での雇用不安が予想されている。

TDRIの予測―失業率は悪化する見通し

2002年第1四半期の失業者数は前年同期の148万人から159万人へ、失業率は前年同期4.9%から5.2%に上昇する見通しであることがTDRIの発表によって明らかとなった(人口約6100万人、就業者人口約3200万人)。

失業率上昇の要因は、経済不況による解雇者数の増加と、農産物価格の下落による農業就業人口の減少が要因と見られている。

ただしTDRIの失業率の推計は、2002年の経済成長率を2~2.4%と高めの数値を想定して計算されているが、年始に発表された政府の予測1.3~1.7%を適用した場合、さらに失業率が上昇することも考えられる。

建設業、公共事業の削減で苦戦

建設部門で就労している労働者は現在約110万人といわれているが、2002年には公共事業の削減と、景気後退により40万人程度の労働需要しか見込めないとの悲観的な数字が明らかになった。タイ建設協会(TAC)の報告によると、建設部門の市場規模は経済危機以前には3400億バーツ(1バーツ=3.06円)であったのが2001年には3分の1の1200億バーツに縮小し、2002年にはさらに1000億バーツ程度になるとの見通しである。就業者数も危機前の260万人から2001年には約半数の110万人へ、建設業者は1万社から3800社に、設計事務所は300社から50社に急激に減少している。

TACは、雇用創出という観点からも公共投資の拡大が不可欠であると主張しており、タクシン首相に大型プロジェクトの削減政策の見直しを要請している。

銀行・保険・金融部門もリストラ策発表

  • タイ農民銀行

    2001年12月末で退職する早期退職制度に対して、1060人の応募があり、920人が認められ、合計10億バーツの退職金が支払われた。

  • バンコク銀行

    2001年11月30日までに500人の従業員が早期退職制度に応募した。同年12月末までには700人が、最終月額給与の2カ月分を上乗せした最大22か月分の退職金を受け取り、退職した。同行は、これらの退職者を除いても1万7000人の従業員が従事している。

  • クルン・タイ銀行

    24カ月分の退職金を支払うとした早期退職制度には、2001年11月30日までに200人しか応募がなかった。そのため、会社側が応募締め切りを12月15日まで延期し、勤務年数が10年以下の従業員でも応募可能とした。また、退職の際に退職金に2カ月分の上乗せを行った結果、700人が退職した。

  • バンコク・メトロポリタン銀行

    同行は、2002年の業務初めの際に、民営化に向け、規模縮小・合理化を行っていく方針を明らかにした。まず、2002年3月の終わりまでに17支店を閉鎖し、1月末までに応募締め切りとなっている早期退職制度によって500人削減し、人員を3000人まで減らす考え。

  • アユタヤ銀行

    1800人の人員削減策の意向を明らかにし、最大51カ月分の退職金の支払いを検討している。

景気回復は?

ソムキッド財務相は2002年の経済について、「国内需要と投資を刺激し続けながら、2003年までに景気回復したい」と現地紙の年頭インタビューで語り、2002年のタイの経済成長率は2~4%程度を見込んでいることを明らかにした。ちなみに、国家社会開発局(NESDB)は2002年の経済成長を2%と予測しており、2001年末の1.5%から上方修正している。

具体的な景気回復対策として、農村投資基金やピープルズ・バンクのマイクロクレジット制度などを強化していく方針。

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