労働雇用大臣、香港政庁にメイドの最低賃金の現状維持を要請

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

Sto.トーマス労働雇用大臣は、香港政庁が外国人メイドの最低賃金を、現行の月額3670香港ドルから21.6%引き下げる審議を開始したことに対し最低賃金を引き下げないよう要請した。この賃金カットが香港に在住する12万2000人のフィリピン人メイドの本国への送金に与える影響が大きいことを危惧したためである。

メイドの抗議行動

2001年12月2日、フィリピン人と他の国の労働者は、この2年間で2度目の最低賃金の引き下げ政策に反対して、ビクトリア公園から香港行政府までの3.2キロメートルをデモ行進した。メイドたちは、このまま引き下げが続くと1991年の3200香港ドルの水準まで落ちるのではないかと危惧している。また、英語を話せないメイドは、月給1800香港ドル(230USドル)前後しか受給していないため、生活を維持するのにさえ困難だと訴えた。

フィリピン政府の要請

香港の15万2000人のフィリピン人メイドが、帰国した場合、フィリピン国内の家族は、多大な現金収入を失う。

アロヨ大統領は、Sto.トーマス労働雇用大臣に董建華長官への書簡を託し交渉にあたらせた。アロヨ大統領は、非公式ではあるが、香港とその近隣諸国に働きに出ているフィリピン人労働者は、年間70億ドルを本国に送金していると述べている。また、ラモス元大統領は、外国人労働者に対する最低賃金の引き下げは、同様な仕事に従事している中国人と香港人労働者の賃金にも引き下げの圧力や失業問題をもたらす可能性もあると批判した。

Sto.トーマス労働雇用大臣は、2001年12月19日、香港政庁に対して、香港で働くメイドのために最低賃金を維持することを正式に要請した。Sto.トーマス労働雇用大臣は、香港のファニー・ロー・フェン・チューフェン教育労働長官と会談し、アロヨ大統領の董長官あての親書を渡し、最低賃金の引き下げを再検討するよう要請した。レイモンド・タン教育労働庁の報道官によると、ロー長官は、Sto.トーマス労働雇用大臣に、現在賃金調査を実施しており、審議中だと述べ、2002年3月末までは最低賃金の引き下げはしない、メイドの最低賃金の変更時には、事前にフィリピン政府に通知すると約束した。

Sto.トーマス労働雇用大臣は、今回の行動に対し他国の経済に対する過度の干渉ではないかという非難に対し、この訪問は、メイドと彼女らの本国送金に頼っている家族を激励する行動であると説明し、フィリピン人メイドは、香港の市民を「主婦」や「母親」の仕事から解放し、生活の質の向上を可能にしていると強調した。

今後のフィリピン政府の政策に与える影響

フィリピンの海外出稼ぎ労働者に関する問題には、今回の香港のメイドの最低賃金の引き下げ以外に、サウジアラビア、マレーシアの外国人労働者の雇用制限問題がある。この為、政府関係者からは、海外出稼ぎ労働者に対する長期的な政策を見直す時期に来ているのではないかという意見も出始めている。また、帰国した海外出稼ぎ労働者に対する国内での就職斡旋・生活保障政策を開始すべきだという意見も出ている。これらの政策には、海外出稼ぎ労働者が、海外から急な帰国を余儀なくされた場合の生活資金援助制度、就職に有利なように労働市場の求人状況に応した職業訓練制度、小規模の事業を開始出来るような開業資金貸付制度が含まれる。

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