国民健康保険の財政統合関連法をめぐる与野党および労労対立

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

国民健康保険の財政統合関連法(職場健保と地域健保)は2002年1月からの施行を前に、与野党の駆け引きに振り回され、先送りを余儀なくされている。一時多数野党ハンナラ党は独自の財政分離法案の成立を目指すかに見えたが、与党の巻き返しに遭い、それを断念せざるを得ない場面もみられた。2001年12月末現在与野党間の駆け引きは財政統合関連法の猶予期間をめぐっていまなお続いており、再び財政統合推進グループと財政分離グループの間の論争が蒸し返されている。

まず与野党の対立構図からみてみよう。多数野党のハンナラ党は「財政統合に必要な自営業者の所得把握や保険料体系の整備などのために3年間財政統合法の施行を猶予すべきである」と主張しているの対して、少数与党の民主党は「財政統合法の施行を1年以上猶予することは財政分離への方向転換を意味する」と反対している。そしてキャスティングボートを握っている野党自民連は「2年間の猶予期間を設けるべきである」との立場を表明している。

与野党の間では、職場健保の保険料引き上げ率と保健福祉部の健保財政安定化策のひとつであるタバコ税収の使い方をめぐって見解の相違がみられる。例えば、財政統合推進論者である与党民主党の金ソンスン議員は、「現行法通り職場健保と地域健保の財政を統合すれば、(タバコ税収からの財政支援で)黒字見込みの地域健保財政を職場健保財政に移転することで、毎年の保険料引き上げ率を8―9%に抑えることができるが、財政を分離すれば、累積赤字を解消するためにすぐ保険料を40%以上引き上げるしかない」と主張している。これに対して、財政分離推進論者である野党ハンナラ党のシンゼチョル議員は、「財政分離で職場健保の保険料が大幅に引き上げられるという主張は間違っている。タバコ税収を老人医療費として職場健保に5年間3500億ウォンずつ支援すれば、2004年から黒字への転換が可能である(保険料を大幅に引き上げなくても済む)」と反論している。

保健福祉部の健保財政収支分析によると、タバコ税収による財政支援の法制化が成立すれば、地域健保は2002年から、職場健保は2004年から、統合健保財政は2003年にそれぞれ黒字に転換し、2006年からは目標通りの財政安定化を実現することができるという。このような健保財政統合関連法をめぐっては前述の与野党のみでなく労働界でも立場の相違がみられる。まず、民主労総、健康連帯、全国農民会総連盟など29の市民・労働団体で構成される「民間医療保険阻止および国民健康保険拡充のための共同対策委員会」は、「社会統合」を優先する立場から現行の財政統合関連法の施行を強く求めている。

これに対して、韓国労総は「健保財政の統合は職場健保加入者と地域健保加入者の間における公平性問題を引き起こすほか、所得把握および保険料体系づくりが難しく、財政に対する明確な責任意識の欠如で放漫な財政運営が懸念される。財政分離法案はこのような問題点を解決するためのものである」という立場から、「労働者の保険料の大幅な引き上げにつながる」といわれる財政統合関連法案に強く反対している。

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