2001年IT産業の動向

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※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

インドの記事一覧

• 国別労働トピック：2002年3月

インドのIT産業の発展は、今後の国家の発展に強い関連性を持つと予想される。輸出依存度の高いソフトウェア産業の高成長の達成は、世界のIT産業と関連産業の発展と強く結びついている。ソフトウェアの生産額は、GDPの2.5％に達したが、米国のIT不況により、2010年までにGDPの7.5％にするとの国家目標を達成できるかどうかは微妙になっている。

目標修正

世界的なIT産業の成長率の鈍化により、中央政府は、2001年11月、2001年度の生産額の目標値を下げた。米国企業のインドのソフトウェア企業へのアウトソーシングの増加により、ソフトウェアの輸出部門は、今のところ目標を維持しているが、世界的なIT不況の影響を受けたハードウェア部門は大きな影響を受けた。

IT産業の生産額目標値の変更(単位1000万ルピー)

出所：IT産業省

キラン・カルニック　インドソフトウェアサービス業協会(NAＳCCOM)会長は、「インドのIT産業産業は、その主力であるソフトウェア部門では、33％成長は達成できる見込みであるが、2008年までにソフトウェアの輸出を500億ドルにする目標達成は微妙になってきた。今後、この目標を達成するには、輸出額を年35％ずつ増加させなければならない」と述べている。

IT技術者の求人状況

同時多発テロ以後の米国経済の停滞により、海外でのインド人技術者の雇用環境が悪化し、IT技術者の就職状況は、IT技術者の売手市場からIT企業の買手市場に激変した。米国のIT産業の2001年第3四半期の状況は、劇的に変化し、インターネット関連企業がJava言語を使用できるソフトプログラマーを12万5000人解雇した。この影響を受けた4年から15年の経験を持つ技術者が、帰国を開始した。

ただし、企業規模により見解が分かれている。中小のIT企業は、景気後退の不利な影響を受けると考え、一方、大手企業は、事業を拡大する良い機会と捉え、労働市場に溢れかけたIT労働者を採用し、小企業を吸収合併するチャンスととらえている。

一部の経営者は、景気後退時には、労働者を徐々に削減し機械化に投資するので、ソフトウェアサービスを中心にIT産業への需要は増加すると見ている。

米国の労働組合の要求

米国の幾つかの労働組合は、連邦政府に米国の企業が海外の企業にアウトソーシングすることを制限する政策を強化することを要求している。インドの経営者やアナリストは、米国の労働組合の要求は、IT産業でのコスト削減競争の時流に依拠しているインドの企業の期待を冷却させると述べている。このため、インドのソフトウェア企業は、今後様々な形態の企業戦略が必要になってきている。

大手企業の中には、この可能性を予測していた企業もあり、今後は米国企業と共同で第3の企業としてビジネスをしなければならないと分析している。

バジパイ首相は、ITサービスの自由貿易を提唱し、各国が、技能労働者に対する就労ビザの取得を簡略化することにより、IT技術者の自由な移動を容易にする政策を取るよう要請しているが、景気後退時には、各国の労働政策が自国民の雇用維持を重要視するため早急な実現は難しいと見られている。

今後の予測

今後、ソフトウェア産業の発展のためには、2008年までに、220万人の人材を必要とし、加えて、IT産業関連のインフラの整備、インターネットを用いた商取引や行政サービスに関する法整備、そしてIT産業の発展を支援する政府の強い決意が必要である。

インド工業連盟(CII)による米国の景気後退がインド経済に与える影響に関する調査によると、中・長期的な景気後退は、インドの企業に大きな機会を提供する分野もある。その1つがIT機器のメンテナンス事業で、この分野のインド企業は、それほど影響を受けていない。

ヨーロッパと東南アジア諸国に対する市場開拓の努力は、米国の失業率の上昇によりさらに必要になると見られている。

すでに、一部のインドのIT企業は、米国からヨーロッパ諸国へ経営の一部を移動させた。これによりIT技術者に新しい環境が生まれつつある。市場関係者は、ヨーロッパ諸国のIT産業は、米国に比較し数年は遅れており、開拓の余地は大きいと見ているが、労働習慣・市場の分析方法・経営手法の相違、英語以外の言語障壁の問題があり一定の時間が必要だと分析している。