ACUT、労使関係委員会の場で労働時間問題の審議を求める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

オーストラリアの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年3月

オーストラリア労働組合評議会(ACTU)は、近年長時間労働とサービス残業問題を主要な課題として運動を展開している。

そして、ACTUはこの問題をテストケースとして労使関係委員会(AIRC)の場で審議するよう求め、2001年11月より審議が開始された。ACTUは、使用者が労働者に対し「過度な」時間働くよう求めることを違法とする条項をアワードに載せるよう求めている。つまり、使用者は労働者に対し「合理的な」時間働くことを求められるだけで、そうでなければ使用者は割増賃金等を払わねばならないことになる。以下では、ACTUがAIRCの場でどのような請求を行っているのか、そしてこの問題をめぐる使用者団体や州政府の反応などについて解説する。

ACTUの請求内容

ACTUはアワードを通じた労働時間の規制を求めており、合理的な労働時間と過度な労働時間に対する休日付与等に関する規定をアワードに挿入するようAIRCに要請している。ACTUの請求内容の骨子は以下のようにまとめられる(以下の項目ごとにより細かい規定が設けられているが、詳細は省略する)。

  • 合理的な労働時間=使用者は労働者に対し不合理な労働時間働くように求めてはならない。
  • 合理的な時間外労働=使用者は労働者に対し割増手当を支払い、合理的な時間外労働をさせることができる。また労働者は、家族的責任等を含む理由に基づき特定の日において標準労働時間を超える労働を拒否することができる。
  • 過度な長時間労働に対する休日=労働者が4週間にわたり週平均60時間労働を行ったり、4週間にわたり26日労働した場合などには、当該労働者は有給で2日の休日を請求できる。

以上のようなACTUの請求がそのまま認められれば、長時間労働の趨勢に歯止めをかけることが可能となるであろう。しかし使用者団体は、長時間労働化が労働者自身によって問題であるとは考えられていないと主張する調査結果を提出している。アボット職場関係省長官などは、平均労働時間が過去5年間に著しく増えていない証拠があると主張している。ただこのような主張はほとんど信じられていない。

一方、労働党政権下の州政府はACTUの請求を支持し、その見解を一本化した意見書をAIRCに対し提出している。その内容は、(1)使用者は労働者に不合理な時間働くことを求めてはならない、(2)AIRCが合理的な労働時間に関する基準を定めるのが適当である、(3)「度を超した」時間働いた労働者に対しては特別な休日を付与することが適当である、(4)合理的な労働時間に関する諸原則は各産業の事情を考慮して適用されるべきである、等となっている。

この問題に関するAIRCの決定は、1947年に示された8時間労働制に関する決定以来もっとも重要なものとなると思われ、その行方が注目されている。

2002年3月 オーストラリアの記事一覧

関連情報