ブルーカラー労組LO、社民党大会で大きな成果

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年2月

11月5~10日に、工業都市ヴェステロスで開催された社会民主党大会において、労働組合は以下のような組合支持の重要な決議を獲得した。

  1. 失業補償の即時増額
  2. 現在パートタイムで就業中の人にパートタイム就業も可能としつつ、フルタイムの職の権利を与える
  3. 産業保健サービスを全ての使用者の義務とする
  4. 新たなリハビリ保険

大会で組合の提案に対してこのように圧倒的支持があるとは、党指導部は予想していなかった。次回の議会選挙は、2002年9月に行われる予定であるが、組合の提案に同意が得られたため、スウェーデン労働組合総同盟(LO)の選挙運動は、これから熱気を帯びて片時も休まずに行われることになった。

1999年のスウェーデン議会選挙において、社会民主党の得票は1921年の普通選挙導入以来の最低を記録した。間違いなく、その理由は、強力なブルーカラー労働組合同盟であるLOの組合員200万人のうち、社会民主党に投票したのは53%(前回の選挙より13ポイント減少)に過ぎなかったことにある。ホワイトカラー及び専門職組合の大多数の組合員は、中産階級諸政党に投票した。社会民主党員の組合員の多くは投票しなかった。多くのLOの組合員は前の共産党に投票したが、これは社会民主党指導部に対する一種の抗議票であった。これらの離脱現象の理由と考えられるのは、「我々は、もはや自分を党員であるとは考えていない」との意識が様々な形で表れたことである。

LOのあらゆるレベルに同党の指導部に対する不満が感じられ、同盟と全国の組合の上層指導部も例外ではなかった。こうした不満は、結果として、各組合が職場で社会民主党のために宣伝を行ったり、投票者を動員したりするという伝統的政治活動が行われないという事態をもたらした。通常、政治教育は、ワークショップ委員が個別に組合員と接触したり、ワークショップクラブでの教育活動の一環として行ったりしている。当時の政府のネオリベラル経済政策も、組合活動家の意欲を削いだ。

同党に対する不満は、必要以上に厳しいと考えられた社会政策が長年にわたって行われたことで醸し出された。この社会政策によって、失業者数がなかなか減らず、失業給付の削減が行われ、1990年代始めの景気後退後の回復が妨げられた。社会民主党指導部と同党のエコノミストたちは、景気後退に対応するために社会保障給付を厳しく削減したことによって、極めて高い失業率が長引いたことを後に認めている。

大会での決議内容

  1. 今回の社会民主党大会における決議には「失業保険の給付上限をできるだけ早く引き上げ、失業した際には大部分の従業員が、失業給付金として自分の賃金の8割を実際に受け取れるようにしなければならない」との明確な表現も盛り込まれた。この新たな決議によって、8割補償を100日までとする制限も撤廃される予定である。
  2. 第2の決議は、主に女性労働力人口の40%、即ち本当はフルタイムで働きたいと望みながらも、パートタイムで働いている人々に関わる。こうしたパートタイム労働者が働いている分野は、医療、老人介護や保育、流通や商業である。大会では、現在パートタイムで働いている人々にフルタイムの雇用を要求する権利を与えるべきであるばかりでなく、求人は常にフルタイムの雇用を提供すべきであるとの決定が行われた。現在男性がフルタイムの職を獲得し、一方で女性がパートタイムの職で満足しなければならないのは構造的問題であるとLO委員長は語った。こうした状況は変えなければならない。
    大会には地方自治体のリーダー達も多数出席していたが、以上のような改革を実行するには、時間がかかるし、恐らくかなりのコストも伴いながら、教育部門、医療部門、その他公共サービス部門内の業務組織を根本的に変える必要が起きるであろうとささやき合っていた。しかし今や、フルタイムの雇用が権利であり、パートタイムの雇用は、それを希望する人にとっての選択肢であることが、社会民主党の方針となったのである。
  3. LOが勝ち取った決議の第3番目と第4番目は、病気欠勤の劇的増加に関連している。こうした欠勤により、政府は年間1000億クローネを上回る負担を強いられ、加えて国の生産高に200億クローネの損失が生じている。こうした病気の少なくとも50%は仕事に関係していることが、一般的に認められている。スウェーデンは、政府による非常に良い産業保健サービス助成制度を作り上げていたが、1991年から1994年の中産政党政府(保守陣営)によって、台無しにされてしまった。政府の助成金は打ち切られ、企業の産業保健サービスは任意とされてしまった。現在、産業保健サービスと呼ばれるものは、社内看護師1人と、たまに行われる健康診断に過ぎない、といった状況があまりに多い。組合は、予防のための産業保健サービス提供が義務とされていた状態に戻りたいと望んでいる。
  4. 長期的な疾病や傷害を負った人々のリハビリは、使用者の義務であり、使用者は職場復帰のための計画を立てなければならない。しかし、これは実行されていない。病人や怪我人はお払い箱にした方が安上がりだからである。党大会で認められたLOの要求は、身体的リハビリテーション、訓練、代替雇用提供を統合したプログラムを盛り込んだ使用者負担による総合的リハビリ保険である。このプログラムと対になるのが、現在開催中の国会で会期終了までに議決され、2002年7月1日から予定されている労働災害保険改革である。

社会民主党を支援することによって、以上に述べたような改革の達成を可能にする過半数を国会で獲得するために、現在LOは選挙キャンペーンを開始しつつある。

「我々は、200万人の組合員と党組織との協力を強化しなければならない」とLO委員長は述べている。これは、職場でコーヒーを飲む間にも政治的な話を復活させ、社会民主党に新たな党員を加えようという発案である。LO傘下の国内の全ての組合は、LOが提起した政治課題をめぐって、組合活動家の教育と活性化に全国レベルで取り組むことになるだろう。LOの要求に基づく法案の提出を厭わない政府を社会民主党が形成するには、党は同党支持の有権者の割合をかなり上げなければならない。

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