NWC、賃金勧告を改訂

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年2月

全国賃金評議会(NWC)は2001年12月8日、経済状況が予想以上に悪化していることを踏まえて、5月に発表した「2001-2002年賃金ガイドライン」を改訂し、収益が悪化している企業については「賃金の凍結もしくは削減」を実施すべきことを勧告した。政府は翌日、同勧告を承認した。

NWCは政労使からなる三者委員会で、毎年、当該年度の賃金改定について勧告を発表している。2001-02年に関しては5月に、米国経済が減速するとともに地域経済の先行きが不透明さを増していること、また前年に労働者は十分な賃上げを享受したことなどを合わせ、賃上げは前年より「抑制」するよう勧告していた。

ところが勧告を出してから、とくに米国の同時多発テロ事件以降、シンガポールの主要な輸出先である米国が過去10年間で最大の経済減速に見舞われるなど、世界的な経済環境が劇的に変化した。シンガポール自身も、第3四半期の経済成長率が前年同期比マイナス5.6%と建国以来最大の落ち込みを経験し、雇用情勢も、失業率が6月の2.6%から9月の3.8%に上昇するなど、悪化の一途をたどっている。

こうした状況を踏まえてNWCは今回、政府、使用者、労組に対し、職を確保するために協調行動をとるよう強く求める勧告を改めて出した。具体的には、(1) 業績や先行き見通しの悪い企業は労組と相談のうえ、賃金を凍結もしくは削減し、その際には管理職や役員が進んで範を示すこと、(2) 業績が引き続き良好な企業は月次可変賃金(MVC)などの形で適正な賃上げを実施すること―などを勧告した。

今回の改訂勧告では、雇用確保の方策について多くの言及がなされた。最終的な手段として解雇はやむをえないとしても、まずは労働日の短縮や一時帰休などのコスト削減措置を採用したり、政府が提供している各種訓練スキームを利用して従業員の能力・雇用可能性の向上に努めることを奨励している。

政府は改訂勧告を承認し、民間企業の給与指標に密接に関連する、政治家や高級官僚の給与を実質17~20%を削減した。

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