2001年のイタリアの労働力と労働市場

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年2月

イタリアの労働関係、労働法あるいは一般的な経済状態を語る際には、当然のことながら、2つの地域を念頭に置かねばならない。中北部と南部である。中北部の現在の失業率が7%を若干上回る程度でEU平均以下であるのに対し、南部の失業率は22%とEU平均の3倍に近い。

イタリアの現在の人口は、約5740万人(男性2790万人、女性2950万人)であるが、人口の伸びはすでにマイナスに転じている。このことは、近い将来、労働人口の高齢化や若年者1人が支える高齢者数の増加、著しい労働力不足など、様々な問題を引き起こすことになろう。

2000年のデータによると、イタリアの経済成長率は2.7%である。このペースを保っていけるとすれば、イタリアの経済は約14年後には2倍になるだろう。イタリアの国内総生産(GDP)は、約1兆2730億USドルであり、これを国民1人当たりで計算すると、22,100USドルとなる。これは、最低生活水準をかなり上回るものであり、イタリアの経済成長が改善されることになりそうである。約5700万人の国民のうち、労働人口はそのおよそ半数に当たる2340万人である。

イタリアの労働者は、CGIL(イタリア労働総同盟)、CISL(イタリア労働者組合同盟)およびUSL(イタリア労働連合)の3大労組によって代表されてきた。他の工業国同様、イタリアでも、ここ10年間の組合組織率が低下傾向にある。この主たる理由は、労働組合員の退職が進む一方で、若年労働者が労組への加入を望まなくなってきたことである。こうした傾向のもつ意味は大きい。というのも、イタリアの労働組合制度は、伝統的に「統一交渉(one-channel)」システムをとってきたためである。このシステムは、CGIL、CDSLおよびUSLといった大規模な労組が、他の労組の活動を統一し、労働者の労組への加入いかんに関わらず最終的にすべての労働者を代表するというものである。こうしたシステムの下では、組合員だけが組合費を払い、労組の活動の恩恵はすべての労働者が受けることができるので、フリーライダーの問題が生ずるのである。

おそらく、イタリアの労働関係に関する最も顕著な傾向は、「非典型雇用」の増加である。非典型雇用は、決められた場所で一定時間働くという伝統的な労働契約によらずに採用されたすべての者を含む。すなわち、非典型的に雇用された者は、フルタイムで働くわけではなく、就労場所も一定しない。パートタイム労働は、こうした非典型雇用の1つである。フルタイムの職に就くのが困難になるにつれ、こうしたパートタイム労働はヨーロッパで徐々に増加してきた。しかし、パートタイム労働者に対し、フルタイム労働者と同じ利益を享受させるべきかについては議論がある。多くの西欧諸国は、この種の労働形態にいかなる雇用政策を適用すべきかの選択を迫られてきた。イタリアは、とくに他の選択肢がない場合には、パートタイム労働を引き受けた労働者に不利益を甘受させるべきではない、との態度をとっている。したがって、パートタイム労働を社会・政治・法律制度に適応させ、また、パートタイム労働者にもフルタイム労働者に準じた利益を享受させるような方策を積極的に模索している。

その他2001年に目立った傾向としては、成果主義システムがある。成果主義システムは、労働者が職務遂行に費やした時間ではなく、遂行した労働を基準として報酬を支払う試みである。イタリア政府および使用者側は、こうしたシステムをとることで、生産性が高まり、ひいては経済状態全体が改善されることを期待している。イタリア政府は、企業における成果主義システムの採用が促進されるよう、税の優遇措置を提供しているが、多くの使用者はこのシステムを導入することに積極的ではない。このため、イタリアでは、成果による調整なく月ベースで給与を受ける労働者が多い。しかしながら、雇用管理のあり方は大いに議論されるようになっており、契約の再評価や変更の動きもみられる。

最近、フルタイムの職が少なくなるにつれ、労働市場から排除されてきた少数者(若年者、女性、長期失業者など)を組み込むことで、社会的疎外に対処しようという傾向が現れてきた。つまり、労働市場への参入者が増えるにつれ、就くことのできる職が減っており、このため、パートタイム労働などの非典型雇用が雇用機会増加のための方策として捉えられるようになっているのである。

イタリアの労働省が関心を寄せる問題の1つに、移民問題がある。イタリアに職を求めてやってくる外国人もあるが、外国人は「就労目的居住許可」をもたなければ、労働契約を締結することはできない。この許可は、当該個人のために現実に職が存在することを確認するためのものである。現在のイタリアのように労働市場が厳格な国では、こうした許可は重要である。経済理論の基本原則によれば、賃金のインフレーションをコントロールという点で、移民労働者は経済によい影響をもたらすとされている。しかし、賃金が過度に低く設定された場合には、経済の停滞という弊害が生ずる。そして、こうした状態は、移民労働者が原因で引き起こされることもある。外国人と労働契約を締結する使用者は、外国人を雇ったことおよび当該労働契約の終了時期について、警察に通知する義務を負っている。

その他に重要な問題として賃金がある。イタリアでのインフレ率が年間2.8%であったのに対し、賃金は2%しか上昇していない。つまり、実質賃金はこの1年で低下しているのである。これに加えて、ここ数年の組合指導者と政府とのいわゆる「協調化」(パートナーシップや協働の一種)のために、賃金が実質上約10%カットされている。2000年には、同じ使用者の下で働いているにもかかわらず、派遣労働者に変更された者が200万人、また「自営業」として働くことを余儀なくされた者が200万人いた。このため、休暇や休日に関して問題を生ずる可能性がある。すなわち、伝統的にいえば、自営業者は自らの時間を自由に設定できるために自由業を選択してきたのであるが、自営業が名ばかりであるとすれば、自営業の利益は受けられず、専らその弊害ばかりを引き受けることになるのである。

前述のように、イタリアの失業状態は芳しくない。しかし経済の低迷のために、EC加盟の条件を満たすために社会保障支出を削減するか、あるいは、従来の社会保障システムを維持するかの間でイタリアは選択を迫られている。イタリアの社会保障は広い概念であり、主として次の5つのカテゴリーを含む。

  1. 保健医療:イタリアにいる者はすべて、保健医療の利益を享受することができる。保健医療システムは、医療に関するほぼすべての費用(入院費の一部負担および処方箋に関する所定の料金を除く)をカバーしている。保健医療システムの費用は、労働者、使用者および自営業者の負担する税金によって賄われている。出産・育児休暇も保健医療システムによってカバーされている。母親労働者保護法によると、出産休暇として20週の休暇が認められており、この間もとの賃金の80%が保証される。必要な場合には、さらに6週間の休暇を取得することができ、この間もとの賃金の30%を受けることができる。子供が生まれてから1年間は、子供の育児のために労働時間を1日あたり2時間縮小することができる(賃金への影響はない)。同休暇は父親も取得できる。
  2. 児童福祉および教育:3歳から5歳までの児童は、「プレ小学校」と呼ばれるデイケアシステムに組み込まれる。一方、3歳未満でこのデイケアを受ける児童はほとんどいない(しつけや費用の問題のため)。イタリアでのデイケアは、公立と私立のいずれも存在する。6歳になると、児童は小学校への入学が義務付けられる。小学校は8年教育である。小学校もまた、公立と私立がある。
  3. 年金:イタリアでの年金制度は、人々が年金基金へ支払った保険料に基づいて運営されている。人々が受け取る年金額は、年金基金へ保険料を納付した期間と職業生活最後の5年間の賃金とに基づいて算定される。ただし、法律では、年金受給権者が退職した際に受給できる最低額の保証が定められている(注1)。40年間働いた場合には、年金満額を受給することができる。年金は、65歳以上で所得のない者に対しても支給される。年金額は、生活費の上昇に応じて1年に4倍まで増額される。年金は遺族(配偶者、子、場合によっては両親)に対しても支給される。すなわち、ある労働者が5年間働いていれば、当該労働者の死亡により、遺族年金が支払われる。遺族年金の受給権者は、第一位が配偶者と子であり、これらの者がいない場合に、その他の家族(両親、兄弟姉妹)が受給権者となる。年金制度からの年金受給が5年に満たないうちに受給権者が死亡した場合には、その配偶者、子または両親に対し死亡一時金が支給される。
  4. 公的扶助:公的扶助は、家族を扶養しようとするにもかかわらず、その所得が当該家族の生計を維持するに足りない者に対し金銭を支給する制度である。社会福祉による給付は、対象となる家族の所得が一定額を超えた場合、ないしは、その児童が18歳になった場合には支給されない。
  5. 労働者に対する基本的給付:労働者が疾病に罹患した場合、当該労働者は、最初の21日間、もとの賃金の50%を受け、また、その後108日間はその66%を受けることができる。当該疾病が長引く場合、当該労働者は労働不能手当を受給することができる。失業給付も、このカテゴリーの給付である。失業給付は、失業状態になってから180日間、失業直前3カ月間の賃金の20%に相当する額が支給される。

1997年法律196号は、労働時間を週40時間に限定している。

週の最大労働時間を40時間から35時間へ引き下げるという議論があるが、2001年において何ら具体的な決定はなされていない。

エンプロイアビリティおよび雇用に関する全国活動計画(NAP)について、2000年にはGDPにも雇用にも伸びがみられた(前者の伸び率は、2.9%、後者は1.9%)。とくに、女性の雇用の伸び率は、5.1%にも達した。女性の就労水準は、依然として構造的に低いが(とくに南部。ただし、2000年には南部でも女性の就業率が上昇している)、このように男女格差の縮小を示す指標も出ているわけである。したがって、1990年代に始まる女性の就業率の伸びは(1995年には35.4%から39.6%へ上昇)、依然継続しているといえる。このように就業率が上昇している一因としては、パートタイム労働や派遣労働、新見習労働制度による就業機会の増加などが寄与していることが挙げられよう。

2000年からの傾向として、失業率が10%を下回っていることも指摘できる。これは、ここ10年で最も低い水準である。以上のようなデータをみるときには、公的部門における大規模な改革を考慮しなければならない。この分野で施策が実施されたことで、就業に関してより大きな問題に直面してきた女性、若年者あるいは長期失業者などを雇う環境が改善されたのである。新たな事業や活動の実施を含む構造の変化によって、さらに成長が続くと予測されている(2001年1月には成長の鈍化がみられたが、これは毎年繰り返されるこの時期の特徴である)。

女性の労働市場への参加促進にあたっては、パーソナルケアの提供やパートタイム労働の推進を通じて、労働と家庭での需要とのバランスが図られた。また、改革の実施ならびに中央や地方レベルでの展開にあたっては、労使および政府間の対話も一定の役割を果たした。すなわち、こうした対話によって、全国レベルでは、インフレ率に応じて購買力を高めることが保証され、また地方レベルでは、生産性や市場の状態、技術革新などに関する格差を考慮することが可能になったのである。

EUの定める指標によると、イタリアの就業人口は全体の15%強、うち女性の割合が20%、そして55歳から64歳までの者の割合が22%とされている。このような低い評価のため、EUの提示したイタリアが達成すべき数値設定との格差は非現実的なものになっている。しかし、これまで達成した結果を基礎とした上で、国別に設定された達成基準に従えば、イタリアの達成すべき目標を定めることもできるだろう。とくに、イタリアが現在の経済のペースを保っていけるとすれば、リスボン委員会で示された、今後10年以内の完全雇用という戦略的目標を達成することも十分可能であろう。

他のヨーロッパにはないイタリア独自の問題として、中北部と南部との間に存在する大きな格差がある。しかし、イタリアは、中北部と南部とで極端な差を設ける現在の取扱いから、失業の再分配による均衡確保の取扱いへと徐々に移行しつつある。昨年に関しては南部での成長も報告されているとはいえ、格差の縮小はほんのわずかにすぎない。南部での著しい成長を図るには、特別な施策が必要であろう。しかし、EU加盟のための目標数値に達するには、中北部が、1995年から2000年の成長のペースを維持しさえすればよい。というのも、1990年代に実施されたマクロ経済に関する改革によって、イタリアのEUへの加盟が可能になると同時に、雇用も促進されているためである。

中北部の失業率は、EU平均よりも低いが、南部の失業率は2倍以上である。リスボンで設定された今後10年内での完全雇用という目標を達成しようとすれば、こうした格差を克服しなければならないであろう。

少なくともイタリアにおいては、雇用目標を達成するためには、失業への取り組みに関する地域戦略を発展させていくことが必要である。新内閣は経済の停滞によいって生ずる問題と昨年の発展傾向を継続させる必要性の両方を考慮して、今後2・3年の政策決定の枠組みを決めていかねばならない。その際には、これまで実施した政策や女性の就業を促す政策を強化し、低技能労働者を雇用し、高齢労働者が就労を継続することを支援することも必要である。実施すべき改革の1つに、労働コスト(とくに、租税と社会保険料)の引き下げがある。企業における技術革新の推進によって達成される競争力の強化も重要であろう。

このための制度はいくつかの柱により成り立っている。まず第1の柱は、新規の分野や既存の分野での変化に対処するため、既存の政策を改善し、新たな政策を作り出していくことである。この政策の下では、次のような成果が達成された。すなわち、若年者の失業待機期間の短縮、女性の就業率の劇的上昇、長期失業の若干の改善である。

第2の柱は、すでに実施され、EUの指標でも有効と評価された政策を引き続き実施することである。さらに、起業に関する訓練や支援、新規企業や小規模企業に対する租税措置、行政手続迅速化ための優遇措置が増えていることを指摘しておかねばならない。政府は、弱者の包含に対する支援や雇用創出の効果を考慮して、第3次産業の発展を重要なものと位置付けているのである。

第3の柱は、労働者のアダプタビリティを高めるための訓練である。職業訓練休暇や個人別の訓練に対するニーズが実現される。生涯教育の強化は、2001年の国家予算法において掲げられており、速やかに財源を充てるべきものとされている(そのための基金は労使によって運営される)。

第4の柱は、女性の雇用を促進する方向で上記の政策を適用する一方で、機会均等の役割を十分活用し、ジェンダー関連の雇用政策の機能を改善することである。これによって、労働分野における男女の平等および均衡が促進されるとともに、性差別が解消されるであろう。出産・育児休暇の規定は、家庭生活と労働との調和を目的としているのである。

21世紀は、大規模な変化の世紀であり、イタリアもその影響を受けないわけにはいかない。変化を見守り、新規参入者が排除されることのないよう、政府は、こうした変化に対する絶対的な統制権限をもつべきことを強調している。そのための施策としては、電子機器操縦免許証や身分証明証制度の実施、電子署名の開始、情報提供協定、カルテの自動管理の実施などがある。これらの新技術によって、しばしば発展を阻害してきた非効率な公的機関のイメージは変化することになろう。

中北部と南部のとの格差を考慮すると、おそらくイタリアにとって最も必要なのは、全国レベルでの改革ではない。この点が認識されているために、イタリアの雇用計画・政策は州レベルで実施されてきた。州レベルで実施する利点は2つある。すなわち、格差の認識と、州政府への委任による責任や効率性の強化である。

2001年から2004年におけるイタリア市場の経済財政発展に関する記録プログラム(DPEF)の中で、イタリア政府は、地域発展の調整に対する政府の関与を改めて強調した。この実施のため、政府は、南部の公共投資に充てる資金の増額を約束している。こうした政策を実現するための戦略には、既存のジェンダー政策との連携を強化することや、欧州車回帰金(ESF)の10%を平等促進のために用いることなどが含まれている。その他の政策としては、州の政策決定の役割や租税権限の強化がある。南部の発展を適切に監視するため、南部の動向を把握する84の社会経済およびインフラ関連の指標が用いられている。

雇用増加のために政府が目標としているものとしては、質の向上、多様化、弾力化および訓練がある。この目標には、以下のようなことが含まれる。

  • 個人がその生活の様々な段階において利用しうる教育・職業訓練を創設すること。
  • 教育訓練へ参加するための経済的障害ないしその他の障害を除去すること(たとえば、教育手当や教育許可証など)。
  • 教育・職業訓練の代替となる様々なシステムとの連関を図ること。
  • 失業の場合に、労働者が訓練および再訓練を受けることを支援すること。

NAPでは、強制的訓練も規定されている。これは、18歳までのすべての個人は、高等教育ないし職業訓練のコースを受講しなければならないというものである。

職業訓練の場合は、2年間のコースであり、当該コース終了の際には、専門科目コースを受講することもできる。学術的な教育を希望しない若年者に対し、その代わりに実際的な訓練を提供することがこのシステムの目的である。

2000年および2001年のNAPで規定された事項としては、労使および政府間の対話がある。

政府および労使間で所得政策の合意が成立した1993年以来、イタリアはかなり難しい予算技術を用いなければならなくなった。2001年のNAPに関する取り決めは、2000年のNAPで規定されている。それによると、中央政府と地方政府との関係に関する手続であれば、中央の措置と地方の措置を調整するのに必然的にともなう措置だけでなく、補完的な措置の実施に関しても、政府および労使間の合意で決めることとされている。国庫の赤字およびインフレの上昇が近年恒常化しているために、労使は所得政策の手続をバーゲニングの材料として確保し続けている。

2001年のNAPは、雇用センター(CPI)が完全にその機能を果たすことを要求している。州に存在する多くの指導センターや訓練局は、すでにEUの当初のガイドラインに沿って機能している。先に述べた行政手続迅速化のための措置は、当然のことながら州のすべてに関係する。すべての州は、新たな地方分権制度を承認するための法規を採択している。国と州との間で締結された合意では、すべての国民に対しイタリア内のあらゆる場所で提供すべき最低限のサービス水準に関して規定するものもある。

2001年には、労働法および安全衛生に関する州の新たな立法権限に関して、憲法改正も実施されている。 労働省は、イタリアがEUとの足並みをそろえる努力をしていることを印象付けるため、様々な改革の動向を監視している。その一環として、2つの報告書が2000年6月と2001年2月に提出されており、そこでは昨年1年の国内の進行状況(および南部での若干の遅れ)が指摘されている。

目立ったものとしては、CPIが481設立され、全国の2/3をカバーするようになったことがある。さらに、CPIの中には、管轄外地区の最小限のニーズを満たすよう権限を拡大したものもある。他方で、障害者などのように利用者を限ってサービスを特化しているCPIもある。こうしたCPIは、イタリアの法律の要求に直接応えるものである(法律では、各企業の労働力の一部を「被保護」カテゴリーとされた集団から雇用しなければならないと定められている)。

前述の最低基準に関する国と州との合意では、次の5つの基本的機能が規定されている。すなわち、(1)一般的指導、(2)情報提供とプロモーション活動、(3)人材の選別および需要と供給とを合致させる事業、(4)特殊な集団のための事業、(5)ビジネスに対するより高度の事業である。CPIの活動についても、地方分権化が行政に要求されている。

労働省には、中央政府の直接のコントロールを受けて活動する特別委員会も設置されている。改革の一端として、女性労働者がいったん労働市場を退いた後に再び職に復帰するための継続的生涯教育に関する施設や特別の指針が整備されている。

いくつかの例外はあるが、概ね改革の効果は現れている。職業訓練の数は減っているが、これは訓練制度の多様化の反面と考えられる。また、昨年、消極的支援にすぎない「社会的有用労働(LSU)」は廃止された。

新立法によると、2001には37,000のLSUを安定的雇用へ移行させ、2002年から2003年にはさらに40,000以上の労働者を安定的雇用へ転換することが予定されている。

1997年から2000年にかけて、雇用増加を目的とする様々な租税優遇措置が実施された。

その中心的な制度は'tax credit'である。これは、労働者を新規採用した企業に対して一時金を支払い、この一時金と租税債権とを相殺するという制度である。

当初、このtax creditは、期間の定めのない契約(パートタイム契約を含む。ただし地域の企業については3年以上の臨時雇用)により労働者を雇った中小企業だけが利用できるとされていた。

この措置の適用を受けた契約の成立は、70,000近くに上っており、措置の効果が現れていることが伺える。さらに、シチリア、カンパーニャ、プーリアでは、促進措置を受けた雇用の約70%が、このtax creditによるものであった。また、この措置は、闇労働市場の解消にも有用であった。すなわち、上記の地域の労働者は、主として小規模企業に雇用されていること、および、1997年9月末には労働者を全く雇用していないとしていた企業の約40%も労働者を雇用していることが明らかになったのである。

1999年の国家予算法では、失業率がきわめて高い地域の中小企業のために、新たな租税優遇措置を導入している。2000年8月末の報告によると、1999年末までにこれらの優遇措置を受けた雇用契約の数は、約7,500に上るとされている。

2001年の国家予算法は、新たなタイプのtax creditを導入した。これは、前2者の租税優遇措置と共通する側面もあるが、かなり異なる側面も有している。その内容は、期間の定めのない契約で雇われた労働者1人につき、3年間一定の手当を毎月支給するというものである。この制度の利用については、雇用が締結された場所や使用者の種類は問わない予定である。いくつかの地域については、さらに付加的な手当が規定されている。この措置の最大の特徴は、自動的に適用される点である。

企業は、租税を算定する際に、特別の手続きを踏むことなく、この措置を直接に利用することができる。したがって、企業が容易に利用できることになるので、これまで租税優遇措置を利用してこなかった企業にとってより魅力的な制度ということができよう。

イタリアが直面しているその他の問題として、人口の高齢化がある。就労年齢にある人口に対する64歳以上の人口の割合は、現在の28.8%から2050年には66.8%になる予定である(同時期のEU平均は、26.7%から53.4%とされている)。したがって、社会保障制度、とくに社会保険制度が、近い将来きわめて深刻な影響を受けることになろう。

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