総選挙後の労使関係政策の動向

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年2月

総選挙結果とその背景

2001年11月10日に行われた連邦総選挙の結果、現自由・国民党連立政権が維持された。自由・国民党連立政権下では労使関係改革が断行されてきたが、OECDはこれらの改革がオーストラリアの経済状況の改善にかなり貢献したと評価している。

総選挙結果をみれば、労働党が有権者を十分に説得できなかったことは明らかである。しかし数カ月前には、多くの識者が現政権が導入した財・サービス税を理由に現政権の敗北を予想していたことを考えると、こうした結果は驚くべきことであった。さらに総選挙前にはいくつかの企業倒産により、政府の労働債権保護策の不十分さが露呈し、市民の間では不安が高まっていた。

自由・国民党が政権を維持することができたのにはいくつかの要素があると思われる。第1に、労働党の戦略に問題があったことである。つまり労働党は、議論を巻き起こすような新たな政策を公表せず、その代わりに現政権に対する不満が高まるのを単に待っていたのである。こうした戦略は、国内的な政策以外の事柄が大きな問題にはならないであろうという致命的な前提に基づいていた。従って第2に、米国における同時多発テロとそれに伴って生じたいわゆる「難民問題」の発生時にも、労働党はそのメッセージを十分に伝えることができなかった。これに対し政府の対応は国内における反難民感情に有効に働いた。

投票日の晩には労働党のビーズリー党首が辞任し、その後任には前ACTU議長であったサイモン・クリーン氏が就任した。

総選挙後の労使関係政策

総選挙の結果、自由・国民党は下院で過半数を獲得できたものの、上院では獲得できなかった。つまり、法案成立には上院における民主党の支持が必要となる。従って若干の法制化はなされるであろうが、あまりに急進的なものは認められないと思われる。

一方の労働党は、ACTU(オーストラリア労働組合評議会)との間に問題を抱えている。自由党によれば、労働党が選挙で敗北した理由は同党が労組によりあまりにも支配されているためであるという。労組組織率は25%程度まで低下しているにも関わらず、労働党には60/40ルールというが依然として存在する。このルールは、労働党大会の代表のうち60%を労組員に分配するというもので、これが労組に不釣り合いな影響力をもたらしているというのである。このルールが現実にどのような影響を及ぼしているかは定かでないが、連立政権にとって労働党とACTU双方を攻撃するのには有用なものであった。これを受けて労働党の新指導部の中にはこのルールの変更を示唆する者もいる。このことがまた労働党内部での混乱を引き起こしている。

雇用職場関係小規模事業省大臣には引き続きトニー・アボット氏があたることになり、今後とも反組合的な政策が維持されるとの見方がもっぱらである。

彼は自分が求めている労使関係政策を提示している。その多くは1999年の職場関係法改正法案に示され、退けられたものである。以下にその概要を示したい。

  • 労組が非組合員に「交渉料金」を課すことを阻止するための法案を作成する。
  • 合法的なストライキを実施する際に、秘密投票を義務づける。
  • 職場関係法の中の「不当解雇禁止規定」の適用除外条項を拡大する。
  • 労使紛争の自主的な調停を強調し、労使関係委員会の権限をさらに縮小する。
  • アワードを一層簡素化し、それに代えて利用が見込まれる認証協定の作成・承認手続きを合理化する。
  • 企業倒産の際に、担保債権よりも労働債権の弁済を優先するよう商法を改正する。
  • 職場関係法を平易な表現に書き直す。
  • 職業教育訓練分野の予算を拡充する。

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