工業部門の賃金ドリフトが過去最低に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

スウェーデン統計局の集計によれば、1998~2001年の賃金ドリフト(注1)は、わずか年1%だった。この新しい数字は過去の水準を大幅に下回っているが、それでも工業部門の協約調停者の予想よりも少し高い。

過去3年間の工業部門の協約は、5.6%の賃上げと年間3日の労働時間短縮(1.5%の賃上げに相当)を取り決めていた。調停者(工業部門の協約のいわゆる「公明正大な議長」)は年0.5%の賃金ドリフトも予想し、3年間で合計8.6%の賃上げを見込んでいた。しかし、現実の賃金上昇率は10.1%となり、年間ベースで予想賃金ドリフトを0.5%上回った。2004年の春に終了する現行の3年協約は、7%の賃上げと年間3日の時短(1.5%の賃上げに相当)を定めている。

使用者が負担する総賃金コストは、労働時間改革の取り決めを含めて過去3年間に年3.4%で増加した。1995年以降、インフレがほとんど進まず、デフレの時期さえあったため、実質賃金上昇率(名目賃金上昇率-インフレ率)は名目賃金とほぼ同じ率で上昇した。これに加えて、子どものいる世帯を対象とする減税と、子どもを地方政府のデイケア・センターに預ける場合に支払わなければならない金額の上限が設定された。このため1980年代の二桁賃上げ(実質賃金は上がらなかった)に比べれば賃金上昇率が低かったにもかかわらず、子どものいる勤労者世帯の経済状態は大幅に改善した。

しかし、ここ数カ月間にインフレが進んでいる。スウェーデン統計局によれば、8月から9月にかけての物価上昇率は0.8%である。この8~9月の数字は主に衣料・繊維価格の上昇が原因で、この時期としては通常の現象である。だが、14%という大幅な衣料・繊維価格上昇は普通ではない。インフレを進めているもう一つの要因は、電気料金、暖房用石油価格、家賃そのものなど、住居関係費の上昇である。

10月初め現在と同じインフレが続けば、年末には物価上昇率は3.2%に達し、政府経済予測機関(Konjunkturinstitutet)によれば、名目賃金上昇率が4%だから、2001年の実質賃金上昇率はわずか0.8%にとどまるだろう。同機関は、10月16日に2001年の最終インフレ率の予測を発表すると見られている。

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