ソニーとエリクソンの合併携帯電話会社発足
 ―企業統治はスウェーデン流

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

2001年10月1日から、ソニーとエリクソンの折半出資による新設独立会社ソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションズが、エリクソン製携帯電話の販売を開始する。新会社の最高経営責任者にはソニー出身の井原勝美氏が、取締役会議長にはエリクソン社ジェネラル・マネジャーのクルト・ヘルストローム氏が就任し、これまでエリクソン・モバイル・テレフォンズ社の管理職をしていたヤン・ワラビー氏がマーケティングを担当する。

電話市場における実績はエリクソン社の方がはるかに上であるが、日本のソニーが新会社の指揮を執る。エリクソン社は過去数年間に携帯電話事業で多額の赤字を出しているため、新会社の設立に当たって交渉力が弱かったことがその理由である。エリクソン社は2000年だけで240億クローネ(1クローネ= 円)の損失を出した。新会社は、エリクソン、ソニー両社が世界市場に占める12%のシェアを引き継ぐが、目標は5年後に世界市場で支配的地位を確保することである。現在、フィンランドのノキアが世界の携帯電話市場の35%を占め、第2位のモトローラが15%、第4位のドイツ企業シーメンスがソニー・エリクソンに次いで8%のシェアを持つ。

ソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションズは、当初はソニー、エリクソン両社のブランド名で電話を販売する。だが来年、新会社は新しいブランド名による独自製品を企画する予定である。新製品は無線データ通信を行う、GPRS(General Packet Radio Services)対応機種が中心で、その後3G携帯電話に移行する。新会社はモバイル・インターネット用の電話に特化する。

新型機種はSMS(ショート・メッセージング・サービス:現在、携帯電話間で送受信されている短いテキスト)からMMS(マルチメディア・メッセージング・サービス)へと発展し、モバイル・ネットで写真やグラフィックス、ボイス・メッセージを送信し、ニュース・サービスや短いビデオ・フィルムも配信する。これらの非常に実用的な多目的通信機器を生産するために、井原氏はモバイル通信に関するエリクソン社の知識と広範な通信コンタクト・ネットワークを利用することにしている。日本側の貢献が期待される分野は、民生用エレクトロニクスに関する長い経験と、より優れた工業デザインやマーケティングである。スウェーデンでは、日本の経営者は自社が事業を実施する国のルールに従うことで知られているため、労使関係をめぐる問題は発生しないと予想される。なお、エリクソン社は長年にわたり日本企業に生産を委託した経験がある。

エリクソン社は125年前に設立され、現在、140カ国に約10万5000人の従業員を擁する。大口顧客上位20社が売上高の80%を占めている。最大顧客はドイツ・テレコム、テレフォニカ、ボーダフォン、フランス・テレコム、テレコム・イタリアである。スウェーデン国内での売上高は全体の5%にすぎない。同社は真の国際的企業たらんとするが、経営陣はドイツ人の情報担当取締役を除く全員が今なおスウェーデン人である。エリクソン社の携帯電話関連労働者数は、昨年末時点で1万7000人であった。新会社は、日本、スウェーデン、ドイツ、アメリカで従業員3500人だけを雇用する予定である。また、スウェーデンで法人登録するためコーポレート・ガバナンス(企業統治)はスウェーデン法に従い、新会社の従業員は取締役会に代表を参加させる権利を持つ。

1995年1月、エリクソン社は、EU加盟15カ国およびノルウェーの労働組合からなる欧州労使協議会の設立に関する協定に署名し、2001年、向こう6年間を対象とする新協定を締結した。労使協議会は賃金や給付を取り扱うのではなく、経営問題について討議する。関連労働組合はイントラネットでも定期的に会合を開き、労組代表用のチャットルームを設けている。労使協議会は、通例の取締役会前に開かれ、取締役会の議題について話し合う。スウェーデン国籍の多国籍企業では、労組が欧州労使協議会の対象になっていないアジアにおける労働条件についても問題提起し、スウェーデンの労使関係の優れた面をアジアの工場に導入しようとすることがある。このように欧州労使協議会は、先進的な労使関係を他国へも伝える役割をも果たしているのである。

欧州労使協議会の一つの成果は、現地経営陣が、労組を興味深い討議パートナーとして認識したことである。「ストックホルムへあなたが来るのなら、まず会って話をしましょう」という具合に。ソニー取締役会は、エリクソン社の従業員が法律に基づいて取締役会に数人の代表を参加させていることを知って衝撃を受けた。しかしソニー側は、エリクソン社の大株主らが最初は労使協議会案に反対したが、今では優れたシステムだと考えていることも聞いている。

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