与党、総選挙で圧勝
 ―雇用問題が争点に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

2001年11月3日に実施された総選挙で、ゴー・チョクトン首相率いる与党人民行動党(PAP)が84議席中82議席を獲得し、圧倒的勝利を収めた。景気後退局面で行われた今回の選挙戦で、PAPは雇用問題を争点に掲げ、国民も難局打開には改革よりも実績が重要との判断を下したようだ。

選挙結果

PAPの今回の得票率は75.3%で、前回(1997年)の65.0%を大きく上回った。11月3日の投票日に実際に争われたのは84議席中29議席。それに先立つ10月25日の立候補者届け出日に10選挙区で対立候補がなかったため、PAPはこの時点で議員定数84議席の過半数を超える55議席を無投票で獲得していた。

野党は、前回選挙に引き続き、労働者党(WP)のロー・シア・キャン書記長、シンガポール民主連合(SDA)のチャム・シー・トン書記長が計2議席を確保するにとどまった。

選挙戦の争点

今回の選挙は、景気後退局面で行われただけに、労働・雇用問題が主要な争点となった。選挙戦での論戦を通じて、個別論点についての与党PAPの立場が浮き彫りになった。

1.失業手当

シンガポール民主党(SDP)は、解雇労働者の手当に関して、解雇後最初の半年間は給与の全額、次の半年間は4分の3、さらに次の半年間は半額を支給することを内容とする、20億Sドル規模の「解雇手当18カ月スキーム」を提案した。これに対し与党PAPは、諸外国が失業手当制度の見直しを進めていることに逆行する提案であり、失業状態を長期化するだけだと反対した。財源確保の面でも、提案を採用した場合には、各家計が毎年2000Sドル以上の税金を払うか、外貨準備を取り崩してさらに対外債務に頼るかしかなく、とうてい実行できないとPAPは主張した。

2.最低賃金

SDPは、労働者を搾取から保護するために最低賃金制度の導入を主張し、導入時の最賃額として時給5Sドルを提案した。これに対し与党PAPは、諸外国の例を引き合いに出しながら、最賃は最終的にシンガポールに高失業をもたらすだけだと反論した。また、SDPの提案を前提にすると、1カ月の最賃額は約1040Sドルとなり、中国等の低廉な労働力(1カ月300Sドル)に全く対抗できなくなると主張した。

3.外国人労働者

SDPとSDAは、まずシンガポール人を採用し、まず外国人を解雇するという「シンガポール人優先」政策を採用すべきであると主張したのに対し、PAPは、外国人労働者の存在がシンガポールに外資を引きつけ、そしてこれが雇用と高成長に大きく寄与しており、すべての外国人がシンガポール人の雇用を奪っていると見るのは誤りだと反論した。

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