日本人渡航者の激減で、旅行産業に深刻な影響

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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日本人のフィリピンへの渡航者が激減し、2001年のフィリピンの旅行業界は雇用不安の危機に直面し始めている。

フィリピン側の主張

フィリピン旅行産業連合会(FTIP)は、米国の同時多発テロの影響で海外からの旅行者が激減し、地方の旅行産業に従事する約5万人の労働者が失業する可能性があると危惧している。

FTIPに加入しているホテル、航空会社、旅行代理店の経営者やオーナーは、日本政府が2001年10月8日に発表した海外旅行警告2の影響について討議した。この席で、今回の討議の中心メンバーであるリチャード・ゴードン観光大臣は、日本政府の危険度2の警告を「不合理で、非友好的で、賢明でない」判断だと表現した。

アレジャンドラ・クレメンテFTIP会長は、多くの旅行産業は、このままの状態が続けば、2002年には休業に追い込まれると語り、国内の旅行産業は、損失というより崩壊の危機にあると悲観的な観測を述べた。また、フィリピンの外務省に警告の撤回を要求する外交活動を強化するよう要請し、日本政府が、警告を撤回しないのなら外交的に抗議すべきだと主張した。

現地のPhilippine Daily Inquirerの報道によると、多くの経営者が、2001年10月26日パサイ市の日本領事館前で、日本の外務省が警告を撤回するよう要求するピケを張ったと伝えられた。

FTIPによると、フィリピンへの主な海外からの旅行者は、米国、日本、台湾、韓国、シンガポール人である。2001年には、日本からの旅行者は全旅行者の約20%にあたる38万5000人を見込み、平均滞在日数は2.5日で、1日当たり平均100ドル使用すると見積もられている。しかし、現実には日本からの渡航者は、70~75%減少している。

FTIPは、日本政府の警告が2001年11月までに解除されないと、2002年4月から9月にかけての旅行シーズンに日本の大手旅行代理店が発行するパンフレットから除外され、ツアーコンダクターの70%の雇用条件に何らかの影響を与えると予想している。

航空関係者は、フィリピン航空(PAL)の日本へのフライトは23便から17便に減少したと述べた。PAL副会長のフレックス・クルツ氏は、東京または大阪へのフライトの減少により1カ月当たり320万ペソの損害を受けていると語った。

ある外資系のホテルのマネージャーは、企業にはこれ以上このような状態を続ける余力がないと述べた。

ゴードン観光大臣とFTIPのメンバーは、日本政府が発行した危険度2「海外旅行延期勧告」に含まれる国は、シリア、スーダン、エジプト、レバノン、ウズベキスタン、イランで、フィリピンがこれらの国と同じ警告に含まれるのは不公平であると訴えている。

日本の外務省の海外危険情報の発表内容

FTIPの日本政府への抗議内容は、日本政府の発表と必ずしも一致していない。外務省が発表している海外危険情報では、2001年10月8日以前に、地域毎に危険度2「海外旅行延期勧告」や危険度3「渡航延期勧告」が出されていた。また、勧告理由も同時多発テロの影響だけではない。

同時多発テロ以後のフィリピンに対する海外危険情報の内容を略説すると次のようになる。

毎年のフィリピンへの日本人渡航者数は、30万人前後であるが、2000年は35万人を超え増加傾向にあった。

2001年9月17日
ミンダナオ地方(大部分)の危険度3「渡航延期勧告」を継続。その他のミンダナオ地方(一部)及びパラワン州が危険度2「海外旅行延期勧告」に。これ以外の地域が危険度1「注意喚起」に。
2001年10月8日
危険度1「注意喚起」の地域を危険度2に変更。すでに危険度2以上が出されている地域は継続。
2001年11月16日
ミンダナオ地方(大部分)が危険度3が継続。ルソン島(マニラ首都圏を除く)及びヴィサヤ地域等が危険度1に緩和。

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