外国人産業研修生管理上の問題と政府の対策

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

一方、韓国経総が2001年の賃金交渉指針で「医療保険や雇用保険などの法定福利厚生費の増加に対応するために総額人件費の概念を賃金交渉の場に取り入れる」よう提案したこともあって、総額人件費への関心がにわかに高まっている。ここでは労働部が常用労働者10人以上の事業所2500ヵ所を対象に調査した「2000年労働費用動向」からその実態をみてみよう。

2000年労働費用動向調査の実態

同調査によると、労働者1人の月平均労働費用は277万7000ウォンで、前年対比で16.9%増えた。そのうち、直接労働費用の割合は62.7%で1999年(65.2%)より減り、間接労働費用は増えた。

まず、直接労働費用は174万1000ウォン(前年対比12.3%増)で、1999年の増加幅(10.0%増)を上回っている。そのうち定額及び超過給与は135万(10.9%増)にとどまったのに対して、ボーナスなどの特別給与は39万1000ウォン(17.6%増)に達するなど、特別給与の増加ぶりが目立った。

次に間接労働費用は103万7000ウォン(25.6%増)で1999年のマイナス9.8%から増加に転じた。その背景には公共部門における退職金累進制の廃止に伴い、退職金中間精算費用が急増し、退職金が前年の28.8%減から44.2%増へと急転したことが大きい。

その反面、韓国経総がその増加傾向を指摘していた法定福利厚生費(社会保険料)は18万2000ウォン(8.5%)で前年の増加幅(38.4%増)を大きく下回り、法定外福利厚生費(子女学費補助、食事代、社内勤労福祉基金など)は16万9000ウォン(マイナス2.8%)で前年の213.2%増から減少に転じた。その内訳をみると、固定費に近い食事代(法定外福利厚生費の28%)や社内勤労福祉基金(同16.8%)、住居費補助(同9.7%)などはそれぞれ1.7%、3.3%、2.5%のようにわずかな増加にとどまり、子女学費補助(同11.4%)や保険料補助(同6.2%)などはそれぞれマイナス8.5%、マイナス13.3%のように大幅な削減の対象になった。

もう一つ目を引くのは、全般的な労働費用の増加傾向のなかで、業種別と企業規模別に労働費用に大きな開きがみられることである。まず業種別労働費用の推移をみると、公共部門で電気・ガス・水道事業の増加ぶりが目立っている。同事業部門の労働費用は741万5000ウォンで1999年のマイナス15.1%から一気に123.4%増加に転じた。特に退職金(前年対比で925.7%増)の増加が著しい。製造業のそれは増加傾向にあるとはいえ、平均値にも満たない245万1000ウォン(15.8%増)にとどまっている。逆に減少傾向が目立つ金融保険業は331万3000ウォン(マイナス10.0%)で99年(マイナス7.3%)より減少幅が大きくなっている。

次に企業規模別にみると、従業員1000人以上の大企業は316万4000ウォンに上っているのに対して、30~99人の中小企業は152万6000ウォンにとどまっており、大企業と中小企業の間には2倍以上の開きが生じている。特に直接労働費用(190万5000ウォン対115万7000ウォン)より間接労働費用(125万9000ウォン対36万9000ウォン)、そのなかでもとりわけ退職金(80万3000ウォン対13万7000ウォン)でその開きはさらに大きくなる。このような退職金の急増に伴う企業別格差の傾向は、通貨危機後早期退職制や退職金中間精算制の実施に伴い退職金の支払いが急増した、1998年にもみられる。

通貨危機後多くの企業が人件費削減策の一環として雇用調整とともに正規労働の非正規労働への切り替えに走るのは、雇用の柔軟性向上のみでなく、増加傾向にある労働費用の削減をも迫られているからであろう。つまり、経営側は労働費用(総額人件費)の手っ取り早い削減策として正規と非正規労働者の間における労働条件の格差に目をつけているのである。

統計庁の「経済活動人口付加調査(2001年8月)」から正規労働者(常用)と非正規労働者(臨時・日雇い)の労働条件の実態をみてみよう。

正規・非正規労働者の労働条件

まず実際の雇用状態をみると、「特別な事由がない限り継続勤務が可能である」と答えたのは正規職の場合99.5%、臨時職(雇用契約期間1年未満1カ月以上)と日雇い職(1カ月未満)はそれぞれ90%、75%に達している。特に臨時職のうち、実際の勤続期間が1年以上の者は44%、3年以上の者も18.4%に上っている。また正規労働者と同様に週36時間以上働く臨時職と日雇い職はそれぞれ93.1%、75.4%に達するなど、実際に多くの非正規労働者の雇用状態は正規労働者とあまり変わらないことがうかがえる。

しかしながら、労働条件をみると、両者の間には大きな開きがある。まず、3カ月間(6~8月)の月平均賃金は正規労働者が167万ウォンであるのに対して、臨時職と日雇い職はそれぞれ91万3000ウォン、68万8000ウォンにとどまっている。時間外手当をもらっているのは臨時職7.4%、日雇い職2%、また退職金とボーナスは臨時職10%、日雇い職1%にすぎない。その他に、社会保険の加入率も臨時職は20%前後、日雇い職は2~3%にすぎない。

このように正規と非正規労働者の間には依然として労働条件に大きな開きがあるだけに、正規の非正規への切り替えは総額人件費の削減にとって即効性のある手段として好まれる状況が続いているといえる。このような状況は正規、非正規を問わず労働者側にとって決して好ましいとはいえず、労働市場の流動化が労働者側の犠牲のみ(特に在職者と失業者の間、さらには正規と非正規労働者の間における雇用機会及び労働条件上の利害対立の助長)を強いる方向で進まないように正規と非正規労働者の間における「雇用の柔軟性及び労働条件の格差」を緩和するための対策が急がれているのである。

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