欧州理事会、正式に「欧州会社法」を採択

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

欧州理事会は2001年10月8日、「欧州会社法を制定するための規則」と「欧州会社における労働者関与に関する指令」を正式に採択した。これにより、30年あまりにわたって議論されてきた「欧州会社」がようやく実現することとなった。

欧州会社は、2カ国以上の加盟国で操業する会社等に対し単一の会社として設立する選択肢を与える。欧州会社になることで、会社は加盟各国の異なる法律ではなく単一の規則に基づきEU域内で操業でき、経営陣や報告制度も一元化できる。その結果、経営コストもかなり削減できると予想されている。

欧州会社法は採択から3年後の2004年に施行されることになる。

欧州会社と労働者関与

欧州会社法によると、欧州会社の設立方法は次の4通りである。

  1. 持ち株会社たる欧州会社の設立
  2. 共有子会社(joint subsidiary)たる欧州会社の設立
  3. 2カ国以上の加盟国に拠点を持つ会社の合併
  4. 国内法に基づき設立された既存会社の欧州会社への転換

欧州会社設立に当たっては従業員代表機関との労働者関与に関する交渉が必要とされる。これは「労働者関与に関する指令」に基づくもので、労働者関与についてお互いが納得できる協約を締結できなかった場合には、同指令の附則に定められた準則(standard principles)が適用される。準則は欧州会社の経営者に定期報告を義務づけ、それに基づき従業員代表機関との定期的な協議・情報提供が行われねばならないことになっている。

準則の中で特に問題となったのは、労働者参加に関わる部分であった。この部分については最後までもめたこともあり、内容も入り組んでいる。

まず労使がお互いに納得できる協約を締結できず、かつ欧州会社設立に関わる会社が以前より労働者参加に関する加盟国等の規則の適用を受けている時には、欧州会社は準則の中の労働者参加規定を適用することが義務づけられる。これは欧州会社が持ち株会社等として設立された場合に、当てはまるであろう。

また、欧州会社が合併により設立された場合は、合併前に労働者の少なくとも4分の1が労働者参加の権利を有していた時に、準則の中の労働者参加規定が適用される。

ただ欧州会社が合併により設立される場合については、加盟国に指令(準則も含めた労働者参加の部分)を履行しない権限を認めている。

欧州会社への転換の場合は、転換前に適用されていた労働者参加に関する仕組みが原則として適用され続ける。

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