工業団地、輸出加工区の企業で働く女性労働者に関する調査

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

労働科学・社会問題研究所は工業団地、輸出加工区の企業で働く女性労働者の労働条件に関する調査を2001年7月に実施した。調査対象は500人の女性(うち国有企業101人、合弁企業66人、100%外国投資企業275人、民間企業58人)で、調査対象の84企業の大部分の企業では、従業員のほとんどが女性である。

1.女性労働者の労働時間と所得

調査対象の95.2%の労働者がほぼ定期的に雇用されており、大部分の労働者(82.6%)は週6日働いている。しかしながら週7日働いている労働者が9.8%おり、これらの労働者の産業別内訳は、海産物・農産物加工(35.8%)、建設(35.3)、皮革・製靴(7.4%)、繊維(6.3%)、サービスおよびアクセサリー製造(5.7%)となっている。

女性労働者の81.8%が8時間シフト、12.7%が10時間シフトで働いている。少数だが、海産物・農産物加工(11.3%)、繊維(6.3%)、製靴(1.9%)では12時間シフトで働いている。

女性労働者の平均実質月収の分布(単位100万ドン)
所得 0.3未満 0.3以上 0.5未満0.5以上 0.75未満 0.75以上 1未満 1以上1.2未満 1.2以上
0.4 6.3 35.1 33.9 13.9 10.5

表に見られるような女性労働者の所得は、必ずしも労働者の貢献に見合っていない。現在の物価水準では、特に工業団地や輸出加工区で暮らす労働者の必需品購入などの当座の支出はまかなえるだろうが、貯蓄をする余裕はない。

2.労働安全衛生

職場の危険度について、回答した労働者のうち79.2%は危険物との接触がなく、7.5%がやけどになる危険性がある熱源と接触している。7.3%が滑りやすい場所で働いており、5.6%が有害物質と接触、5%が電気ショックにあう可能性があり、4.8%が爆発物の犠牲となる恐れがある場所で働いている。

58.3%の企業が、労働環境についての年次検査を行っていない。この比率は、合弁企業で最も高く(72.7%)、次いで100%外資企業(60.9%)、民間企業(60%)、国有企業(41.2%)となっている。調査対象84社のうち35社が毎年、労働環境検査を行っているが、これらの企業が実施している検査項目は、危険物質の水準検査(46.5%)、騒音検査(26%)、振動および粉塵検査(8.9%)である。

35社(41.7%)が、省令1998年14号/TTLTが定めるように労働安全担当職員を持つ。44社(従業員1000人未満36社、従業員1000人以上8社)には労働安全担当職員がいない。1000人以上の従業員がいる5社には担当者が一人しかいない。

労働安全衛生に関する訓練は、重視されていないことが多い。特に、その傾向は100%外資企業で著しい。41.7%の女性労働者は入社時に労働安全訓練を受けていない。また48.5%の女性労働者は、1年を通して何も訓練を受けていない。

3.労働法履行状況と女性労働者に関する制度

3.1 契約締結状況

契約に署名した女性労働者の中で78.6%が契約書を受け取り、18%が契約書を受け取っていない、2.4%が口頭での契約で、1%がいかなる形式の合意内容もない。契約期間は1年間が多く(77.5%)、36カ月(8.5%)、24カ月(6.5%)、3カ月(4.6%)、6カ月(2.6%)、9カ月(0.4%)となっている。

3.2 協約締結状況

53.6%の企業が協約を締結していないが、その比率が高いのは、100%外国投資企業(82.6%)、合弁企業(36.4%)、民間企業(20%)で、国有企業(5.9%)では低い。すなわち、非国有企業では労働法が遵守されていないことが多い。

3.3 社会保険料支払状況

企業が労働者に対して負担する義務のある社会保険料は、80.5%が支払い、19.5%が支払っていない。78%が医療保険を持ち、22%が医療保険を持っていない。

3.4 特に女性に関わる人事施策

「8割から9割の企業が採用している制度」…妊娠7カ月以上の女性に対して、時間外労働なし、夜のシフトにつかせない。出産前医療診断、流産のための休み、出産のための休暇に対し、社会保障で保障する。

「7割から8割の企業が採用している制度」…妊娠7カ月の従業員に遠隔地での仕事をさせない。避妊医療を受けるための休みを社会保障で保障する。出産時に1カ月分の給付を与える。子供が12歳以下の場合、夜のシフトにつく必要がない、時間外労働の免除、労働時間内に1時間の休憩、遠隔地での仕事をさせない。全ての女性について、女性がつくことを禁じられている職種につく必要がない。

「6割から7割の企業が採用している制度」…妊娠7カ月の従業員に対し、より軽度の仕事に移す、あるいは、通常通りの賃金を支払いながらも労働時間を1時間短縮する。

48.8%の企業が、月経期間中にシフトを30分間短縮している。

4.現制度の欠陥

調査対象企業の大部分は、女性が非常に多い企業であるにもかかわらず、6社だけが労働・傷病兵・社会問題局(DoLISA)によって女性従業員集約的企業として認められ、優遇措置を適用されている。

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