政府指定ベンチャー企業の構造改革と政府の対応

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

2001年に入ってコスダック市場(注1)の停滞や長引く景気低迷、ベンチャー企業向け投資の急減などの影響で、政府指定ベンチャー企業は厳しい風にさらされている。

政府指定ベンチャー企業は通貨危機後のV字型景気回復、政府の相次ぐ育成策(お墨付き)、長期安定的な資金調達先としてのコスダック市場の急速な拡大などにより、急成長を遂げてきた。特に、金大中政権は通貨危機の遠因とみられていた「財閥依存型経済構造」から脱皮するとともに、新規雇用の創出と労働市場の流動化を促進するための新たな担い手としてベンチャー企業を育成することを経済政策の主軸に据えたこともあって、政府の指定制度は単なる支援策以上の効果をもつようになったといえる。

同ベンチャー企業数は毎月300~400社ずつ増え、2000年末には8798社、2001年9月末現在1万1022社に達した。業種別には製造業6670社、情報関連産業3640社、研究開発専門318社、建設・運輸部門187社など、製造業と情報関連産業がその大半を占めている。これに伴い、コスダック市場に上場するベンチャー企業数も1998年の331社から1999年457社、2000年608社、2001年9月末現在660社に急増した。情報通信部門のバブル崩壊に伴う株価暴落の前はコスダック市場の売買高は証券取引所のそれを上回るほど、急速に拡大したのである。

しかし、政府の積極的な支援策やコスダック市場の急速な拡大などにひきつけられ大量の資金や人材が流れ込んだため、いつのまにか政府指定のベンチャー企業のみでなくコスダック市場への上場企業さえも玉石混交の状態に陥り、その一部は単にマネーゲームの道具にされてしまうことさえしばしば見られるようになった。

そして、情報通信部門のバブル崩壊やコスダック市場の株価暴落を機に、政府の相次ぐ支援策が「バブルを助長した」という批判の声が高まるなど、一転して政府支援の歪みが槍玉にあがっている。

コスダック市場の株価暴落以降みられる最も顕著な変化は、1999年の87社から2000年に147社に急増したベンチャー企業向け投資専門の「創業投資会社(ベンチャーキャピタル)」の数が2001年9月末現在145社に減り、ベンチャー企業に対する選別の眼は一段と厳しくなっていることである。全国経済人連合会(日本の経団連に当たる)がベンチャー企業向け投資を行うベンチャーキャピタルや大企業など384社を対象に調査したところによると、全体の7割がベンチャー企業向け投資を減らすと答えている。同投資削減の理由としてはコスダック市場の停滞(29%)、ベンチャー企業危機論(28%)、ベンチャー企業バブル論(17%)、ベンチャー企業のモラルハザード(8%)などが挙げられている。

政府は前述のような批判に応えるために、まず政府指定ベンチャー企業に対する資格要件の現地確認や事後管理体制(経営不良企業の退場)を強化することにしている。中小企業庁は、7月から8月にかけてベンチャー企業1000社余りを対象に実態調査を行い、そのうち140社余りに対してベンチャー企業の指定を取り消した。取り消された企業は1998年7社、1999年86社から2000年には121社、2001年9月末現在で500社余りに急増した。

また政府与党は10月5日、コスダック市場の需給改善や透明性向上、ベンチャー企業向け投資損失分担制の導入などを柱とする「ベンチャー企業及びコスダック市場の活性化策」を打ち出した。ベンチャー企業とコスダック市場に対する信頼回復が待たれるところである。

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