就労人口が逓減
―若年層の就職困難で、学歴獲得への意欲増す

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

経済活動人口に対する就労人口の割合が次第に減少していることが、ブラジル地理統計資料院のデータに示されている。これは国内の6大首都圏で調査を行い指数化したもので、それによると、1991年に61,07%であったこの指数が、99年には58,02%へ、そして2001年7月には56,55%へと低下した。(注1)

同資料院が完全な月間雇用調査を開始した97年7月から2001年7月までに経済活動人口は2,960万人から9,5%増の3,240万人となったが、この期間に就労人口は1,740万人から1,830万人へ僅か5%増加したに過ぎない。

労働市場の専門家たちはこの現象について種々の説明を行っている。

国際労働機関(ILO)のブラジル代表であるアルマンド・ペレイラ氏は、学歴が低い労働者は就職難とともに、給料水準が低いことを自覚して、教育や訓練を受けてから社会へ出ようとして、就労が遅れていると見ている。同氏は資料院の資料を引用して、92年に15~17歳の就労人口は970万人であったものが98年には770万人へ減少したことと、91年から99年にかけて就学率が増加したことを関連付けている。同期間に15~17歳の中等科の就学率は62%から84%へ、18~20歳の就学率は22%から33%へ増加した。

サンパウロ大学のジョゼ・パストレ労働問題専門教授も、労働市場へ編入される前に教育を受けて置こうとする若者の数が増加していることについて好意的に評価しつつ、併せて、いったん退職した後に再就職するひとたちの就労人口も減少しているとして、高齢者の就職難も一因であると指摘している。

労組の経済研究機関であるDIEESEのセルジオ・メンドンサ理事は、ブラジルの労働市場が後退した結果だと批評している。ブラジルは長期にわたって、毎年伸張してくる労働力を経済構造の中に吸収編入することに努力を払わなかった。経済活動人口は人口増加に従って増加してくるが、雇用市場は経済と社会その他の要因で拡大するところに、この差が生じたと見ている。

政府の応用経済研究所でも、経済活動人口の増加が低下していることについて、学歴の低い労働力に対する就職チャンスが減少しているために、学力をつけて社会に出ようとしていることが主原因であると見ている。同研究所の分析では、1991年と2000年を比較すると、経済活動人口に占める初等科4年までの学歴の割合は29%減少し、9~11年間の学歴の労働者は73%増加している。

年齢別に経済活動人口に占める就労率はこの傾向をはっきり示している。15~17歳の経済活動人口に占める就労者率は91年の35,8%が2000年には19,4%に下がり、18~24歳クラスでは68,9%から63,7%に下がっている。25歳以上の年齢層では余り変化はない。90年代には多くの職種が消滅し、多くの新しい職種が生まれた。こうした雇用市場の変化に対応して、若い年齢層に学歴を付けようとする意欲が起こっている。

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