労働時間の短縮をめぐる政労使の論議

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

労働部が労働時間短縮のための法改正のタイムリミットとして設定していた9月15日を過ぎても政労使間の合意は得られず、労使政委員会の取り組みは続いている。労働部は9月19日、「9月末まで政労使間の合意が得られない場合、10月からそれまで議論されてきた内容と労使政委員会の労働時間短縮特別委員会における公益委員側の案を踏まえて、政府単独の法改正案を今国会に上程する方針」を大統領に報告したという。

1998年2月の社会的合意に盛り込まれていた「労働時間の短縮」をめぐって、労使政委員会は2000年10月23日、「現行の週44時間から40時間に短縮し、週5日勤務制を定着させる」という基本合意には達したものの、年月次休暇の調整や施行時期など細部項目については合意が得られず、今に至っている。ただ、いまのところ進展があるとすれば、国際基準に基づいた休暇制度の導入とそれに伴う賃金補填については労使の間で意見の一致をみている点である。

政府の法改正作業においてたたき台になる労働時間短縮特別委員会の公益委員案の主な内容は次のとおりである。まず、労働時間短縮に関する基本的な立場として、「社会・経済の現実からみて労働時間の短縮は受け入れられるべきものであり、労使はそれに伴う社会的コストを分担し、そのベネフィットを共有しなければならない。今後労働界は生産性向上、財界は経営革新を通じての費用節減、政府は労働時間短縮のための環境整備などにそれぞれ全力を尽くすことが求められる」としている。

次に主な争点については、第1に、「年・月次有給休暇」を「年次有給休暇」に一本化して、勤続年数1年以上の者に18日を与え、3年毎に1日を加算し、上限を22日とする。生理休暇は無給とする。第2に、施行時期については2002年7月から2007年1月にかけて4段階に分けて施行するが、中小企業に対して早期実施する場合は政府の支援措置が必要である。第3に、変形労働時間制(2週間単位、1カ月単位)については労使間の書面による合意に基づいて1年に拡大する。第4に、超過労働時間の上限(週12時間)と超過労働手当ての割増率(50%)については現行の水準を維持することなど。

労使政委員会は9月5日、本委員会を開いて上記の公益委員案を検討したが、労使間の合意には至らなかった。労働界は「労働者の休暇日数と賃金が引き下げられ、実際に生活の質向上にはつながらない」としたのに対して、財界は「施行時期が早すぎるうえ、休暇日数が多すぎて受け入れられない」との立場を貫いた。

一方、労働部が公共部門を除いた従業員100人以上の事業所5053カ所を対象に土曜休日制(週休2日制)の実施状況を調べたところによると、毎週(完全週休2日制)が81カ所、隔週が364カ所、週1回か3回が52カ所など全体の9.8%が土曜休日制を実施している。企業規模別にみると、500人以上1000人未満が19.4%、1000人以上が19.3%、300人以上500人未満が15.2%、100人以上300人未満が6.8%の順となっており、大企業ほど土曜休日制を実施するところが多い。実施の時期は5年未満が67.7%、5年以上10年未満が28.8%を占めており、1990年代、特に経済危機以降に導入しているところがかなり多い。実施の理由としては「生活の質向上(27.7%)」、「労働者や労組の要求(19.6%)」、「能力開発およびリフレッシュの機会(19.1%)」、「生産ラインの効率化および経費節減(15.8%)」、「労働時間の効率的な管理(14.3%)」などが挙げられている。土曜休日制の導入にあたって労働者側のニーズが重視されていることと、導入企業のうち、労組があるのは全体の62.8%に上る点が目を引く。

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