ジョブ・ネットワークが直面する新たな問題

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

オーストラリアは職業紹介事業をいち早く民間委託し、このことが諸外国から注目を集めている。どの国も、現政権が実行したほどまでは職業紹介事業の改革を行っていない。しかし、1998年にジョブ・ネットワークが開始されて以来、多くの問題が生じている。その中でも最近発生した問題はかなり深刻である。この報告では、まずジョブ・ネットワークの概要を示した上で、最近の問題を取り上げたい。

制度の概要

職業紹介事業の改革は、まず公共職業紹介所を廃止し、そのかわりにジョブ・ネットワークを作ることであった。同ネットワークは公的機関であるエンプロイメント・ナショナルと職業紹介を行うおよそ300の民間職業紹介機関から成っている。 求職者はセンターリンクの評価を受け、3つのカテゴリーに分類される。職業紹介機関は日常業務に関し政府からわずかな資金を提供されるが、求職者1人あたりにつき払われる政府からの報酬が大きな収入となる。

大きな問題は制度自体にあった。求人情報は職業紹介機関にとって報酬を得る手段であるので、職業紹介機関はその情報をネットワークに載せたがらなかった。職業紹介機関は、適当な求職者が来るまで密かにこうした情報を蓄積していた。このことが労働市場の分断の一因にもなったといわれている。

最近発覚した問題

2001年6月に開催された上院委員会の審問で新たな問題が発覚した。それは、職業紹介機関が自ら人材派遣会社を設立し、求職者に対し職業紹介や仕事の斡旋を行うためにこの人材派遣会社を利用しているというのである。この方法だと、職業紹介機関は、自らが提供した職業紹介について政府から報酬を得ることができるわけである。政府は職業紹介1件につき約400豪ドルを支払うが、この報酬の支払い要件として求職者が15時間雇用されることが課されている。人材派遣会社が仕事を提供し、15時間働かせるためのコストはおよそ150豪ドルであり、職業紹介機関はこれらのコストを超えるかなりの報酬を得ていることになる。上院委員会の審問では、2000人程度の求職者がこうした怪しげな方法で職を提供されたということがわかっている。

政府はこの問題に対処するために、主な首謀者であるクィンズランド州にある業者の事務所の捜索を行った。これに対し業者側は、政府がこの方法を承認していたと主張した。業者側は、政府やマスコミに対しこの方法を承認するという旨の高級官僚の文書を提出した。さらに雇用サービス大臣がこの方法に暗黙の承認を与えていたとも伝えられ、問題は深刻化している。

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