失業率の悪化とその原因

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

フィリピンの失業率は、2001年1月の11.4%から4月には13.3%に上昇した。国家統計局(NSO)は、この原因を新規卒業者が3月末に労働市場に流入したためと説明している。新規卒業者は例年、卒業後就職するのに数カ月かかる。しかし、現在の労働市場は、新たな求人を吸収するのは極めて難しいのが実情である。

全国的に概観すると、南部ミンナダオ地方が失業率が最も高い。ダバオ市、サウスコタバト市、スゥタンクダラット市が特に高い。この最大の原因は、政府とイスラム解放勢力との衝突による政情不安にある。この地域では、事業を停止した企業や自営業者が相次ぎ、新規の投資を計画していた企業は投資を見合わせた。

また、東部ビサヤス地方は農業部門の雇用が減少した。旱魃による被害、灌漑施設の未整備、鼠の大量発生による被害が、この地域の農業の生産量に多大な減収をもたらし、これが雇用にも影響した。

さらに雇用環境を悪化させたのはアジアの労働市場において、フィリピン人労働者に対する求人が減少していることである。台湾は外国人労働者を80%削減すると発表している。また、インドネシアが低賃金のメイドを派遣し始めたことに伴い、フィリピン人のメイドに対する求人が相対的に減少した。

このような雇用情勢から、政府は早急に雇用対策を実施する必要があると見られている。なお1990年以降の失業情勢の推移は以下の通りである。

1990年以降の失業情勢の推移

失業率(%) 不完全就業率(%)
1990-1994年 9.5 20.0
1995-1997年 8.9 20.0
1998年4月 13.3 21.0
1999年4月 11.9 22.5
2000年4月 13.9 24.7
2001年4月 13.3 17.5

出所:NSOの労働力調査

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