広がる節電の影響(続報)
―企業の63%が解雇予定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

6月から節電が開始された後、内国工業連合会が2週間後に節電の影響について各部門の918社からアンケートを取ったところ、生産調整のために「多分解雇を必要とする」と回答した割合は63%、「多分解雇は必要あるまい」とする回答は22%、「解雇しない」と断言した割合は15%だった。さらに小企業では70,3%が解雇を要するとみている。これは大企業の38,6%と比べ大きな違いを見せており、発電設備を所有できる大手企業と異なり、他に電力取得手段を持たない中小企業の経営困難の実情を表している。

節電によって生産量はどれだけ減少するかと言う予想に対しては、33,6%が「15%以上の減産予想」、一方「減産はあり得ない」と言う回答が24,3%となり、平均を取ると9,5%の減産を予想している。さらに49%は電力危機が2002年も続くと予想しており、このような状況下では企業の積極的な投資も、雇用市場拡大の期待もない。

内国工業連合会のカルロス・モレイラ会長は、「節電がこれ以上強化されると企業は第二次調整を必要とすると見ており、事情次第では解雇が予想以上に増加しよう」との見解を示した。

政府自体が7月11日には、もし事情が悪化すれば第二次節電計画を発令すると発表した。第二次計画は現在の20%節電をさらに拡大し、それでも電力が不足すれば、次は週1日の休日追加発令、最後には毎日一定時間の一律停電などの政策を、段階的に実施するというものである。こうした計画を節電義務発令2カ月目に発表することの政治的なマイナスにも拘らず政府の方針を伝えたことは、政府も深刻な電力事情がかなり長期間に渡って続くと予想している模様である。

ただ、内国工業連合会が節電第二カ月目に企業調査を行ったところでは、節電を理由とする解雇予想は当初に比べると大きく低下している。これは企業は義務節電と言う前例のない事態に直面して当初は驚いたものの、徐々に節電と調和する方法、手段を見出し、その結果、生産後退も雇用減少も当初予想したほどではなくなったものと見られる。しかし、節電の影響に対する企業の回答は調査機関次第でかなりの差があることにも留意する必要がある。

集団休暇採用企業広がる

節電の影響に加え、自動車や電気電子製品を中心に売上げが大きく後退しており、工業の各部門に集団休暇を採用する企業が増加してきた。特に4輪工業は、2001年に190万台の生産を予想していたところを7月には170万台予想に切り下げており、各社とも工場、代理店ともに売れ残り完成車で置場が無くなったために、10~15日間の集団休暇で生産調整を図っている。

しかし、これでも在庫が減少せず、労働者のほうが先に集団休暇の後には解雇がくるのではないかと不安を強めている。

政府系のゼツリオ・バルガス財団が定期的に行っている工業部門の今後6カ月の業績予想調査では、4月の調査で今年は期待出来ると回答した工業は58%であったものが、7月の調査では33%に下がり、一方、状況悪化予想は4月の3%が7月は18%になって、悲観論が広まっている。

その理由として55%が電力危機を指摘し、2003年にならないと電力危機は完全に解決しないと見ている。23%は今後6カ月の間に解雇を必要とすると回答した。

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